2014 Fiscal Year Research-status Report
細菌添加培養処理による感染性ウイルス選択的遺伝子定量法の開発
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26550081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00302779)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | PCR / RNA分解 / 細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
PCR法ではウイルスの感染性の有無について判定できないとされてきている。環境水中に含まれるウイルスには、さまざまな要因によりダメージを受けたウイルス粒子が存在し、感染性のあるウイルス数を定量するのが困難な状況となっている。本研究では、PCR法の前処理として、感染性のあるウイルスを選択的に残す手法の開発を行う。すなわち、細菌を用いた前処理により、ウイルスゲノムであるRNA・DNAを効率的に分解し、なおかつその間に感染性のあるウイルスが感染性を失わない条件を見出す。この手法は、細菌添加培養処理による感染性ウイルス選択的遺伝子定量法であり、ウイルスの感染リスクに関して実際のリスクを反映した評価手法として、レクリエーション水利用や上水道などの分野において、検査法として受け入れられる可能性がある。 活性汚泥や二次処理水中に多く見られる細菌の単離株および30℃以上で増殖する菌を中心に、RNA分解能のスクリーニングを行う。また、モデルウイルスとして複数の腸管系ウイルスおよび大腸菌ファージを用いて、感染力価が低下しない条件を確認する。RNAの分解と感染力価の維持が同時に達成できれば、細菌添加培養処理による感染性ウイルス選択的遺伝子定量法が開発されたことになる。高温加熱処理により本手法の有効性を確認し、さらに、塩素消毒やオゾン処理などにおいて損傷を受けたウイルスを対象に、開発された手法の有効性を確認する。また、EMAやPMA,あるいはRNaseなど、他にも前処理法として提案されている手法があるので、それらの前処理法と比較し、感染性のあるウイルスの選択的検出法としての有用性を比較する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性汚泥や土壌等から単離されている細菌のライブラリを対象として、研究を進めた結果、ウイルスゲノムを分解する能力のある細菌を単離することができた。今後は、環境試料を対象に、単離されていない細菌を含め、さらに高性能なウイルスゲノム分解能を有する菌を模索することと、工学的に必要な作業を並行して進めることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルスゲノムを分解する能力のある細菌を単離することができた。今後は、さらに高性能なウイルスゲノム分解能を有する菌を模索することと並行して、Intactなウイルスのゲノムは分解せず、Nakedウイルスゲノムの分解能が高い細菌という観点から、最適条件ならびに有力な菌を探索することを続ける。
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Causes of Carryover |
今年度は、有用な細菌の評価法を確立することを優先し、環境試料からの探索ではなく、ライブラリーとして手元にある単離済みの細菌を対象として研究を進めた。その結果、次年度以降の探索並びに評価のため、必要な資金を確保する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
環境中の細菌の探索と、ウイルスゲノムの測定のための酵素系の購入に使用する。
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