2014 Fiscal Year Research-status Report
高齢者による地域支援と小学校校舎の地域拠点としての施設存続可能性の研究
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26560020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 哲 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10293888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大影 佳史 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (20303852)
岩田 伸一郎 日本大学, 生産工学部, 准教授 (30314230)
OUSSOUBY Sacko 京都精華大学, 人文学部, 教授 (70340510)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / 小学校 / 余裕教室 / 学校開放 / 居場所 / 地域活動 / 地域支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は3自治体・地域での小学校開放による地域利用と特に高齢者の利用を調べた。 千葉県では全37市町村への問合せから、教育委員会が小学校の開放事例を把握している11市町の全130校のうち回答を得た42校のアンケート結果を分析した。教育委員会が地域活動を積極的に進めている6市では、開催の契機が行政の依頼(29件)と多く、開放の決定も行政(30件)が多いが、学校長は13件と少ない。利用者の可否は各小学校が判断している。スポーツ・文化系活動が36件と多いのに対し地域住民の交流活動は5件と少なく、余裕教室を地域活動専用に使える学校も11件と少なかった。 京都市・長岡京市では小学校の余裕教室を利用した高齢者の居場所づくり22ヵ所、高齢者のサークル活動37団体を訪問し、運営責任者に行った半構造化インタビューを分析した。居場所は地域利用向に設定された1階・棟端部の室、週末の開催が多く、門・棟・教室の鍵のセットを開催毎に職員室に借りる例と、運営団体の貸切が同数程度であった。開始から3年、来場者が40名を越えると、当初少ない男性来場が増え、男女比は1:3を下回るようになる。運営は60歳代後半の女性が多く、下の世代に向けての運営の継続性が課題となっているところが多い。 名古屋市北区の小学校(18校)の学校施設開放では、体育館や運動場での運動・文化系活動が4校、PTAやこども会が5校で利用し、「企画により開放を検討」が2校あった。 以上のように小学校の開放事例を高齢者の活動や利用に限らず全県的に調べることができた意義は大きく、これは公共施設の縮小・統合に向けた議論の中で、小学校施設の地域での存続を考える上で重要な意味をもつ。また、個別の余裕教室での高齢者利用の実態を現地にて観察の上、ヒアリングを重ねることができたため、高齢者対象の通常のアンケート調査では得られない分析もできた意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京都市・長岡京市では居場所22か所、サークル37団体の現地視察および運営責任者へのヒアリング調査を実施できた。これは研究申請時点で市のHPに登録されていた7か所を大きく上回る調査であった。ヒアリング内容は当初予定していたハード面については、校内で地域利用のできる室は、位置が固定され、週末の開催が多かったため、ソフト面を中心にした42項目に及ぶ調査を実施・分析することができた。これは大きな成果である。また千葉県の調査は研究申請書の段階では予定していなかったが、全県にわたる学校開放事例から、教育委員会が把握、もしくは、推進している市町村を選定し、調査に協力の得られた42校のアンケート調査を実施することができた。これは公共施設の数や配置の縮小に向けた議論の中で、本申請の目指す小学校施設の地域での維持存続を考える上で重要な意味をもつ。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、高齢者がもつ知識や技術などを用いた地域活動、地域支援への意欲、その活動が小学校を拠点としうるか、などについての調査の実施を予定している。平成26年度の交付申請の時点では、現在小学校の余裕教室を実際に利用している、高齢者の居場所づくりの運営者や毎回の参加者、高齢者サークルの運営者や参加者をそのヒアリングやアンケートの調査対象と考えた計画書としていた。しかし、平成26年度、小学校の余裕教室の利用調査(京都)の中で、高齢者の居場所づくりの運営者は、すでにこれを地域支援の一環として実施しており、既にほかの活動も数多く運営しているため、これ以上の追加の活動は過剰な負荷となることがヒアリングの中でしばしば聞かれた。居場所づくりに参加する高齢者には、地域支援をする・しようと考えるであろう側は少なく、体力・気力の面で支援を受ける側が大半であった。高齢者のサークル活動の運営者・参加者では、このサークル活動のみに従事することで手いっぱいであり、これだけを日々楽しみにしている感が見られた。また、全県にわたる小学校の学校開放事例の調査(千葉)から、開放事例が児童中心であり、高齢者支援などの活動は公民館で実施されており、小学校の余裕教室が高齢者向けに進んでいるのは、上記の京都の事例であることもわかった。以上のような理由から、平成27年度は、小学校の余裕教室を実際に利用している高齢者の居場所づくり・サークル活動関係者への踏み込んだ調査ではなく、上記運営や当日参加に至っていない層を対象として、これを新たに発掘すること、そして、その活動が小学校を拠点としうる可能性を探るような方向へと重心を置くことを想定している。
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Causes of Carryover |
千葉県、名古屋市の調査にあたり、全県の中での小学校開放事例を抽出する作業(市町村のホームページサイトや教育委員会、社会福祉協議会への電話確認) に時間がかかった。さらに小学校開放事例の中で、高齢者の利用事例が少なく、アンケート調査への協力に了解してもらえる事例にたどりつくまでに時間を要した。このため調査では小学校へ実際に、高齢者の利用の様子を視察し、現地でヒアリングをするまでに至らず、アンケートでの調査となった。以上、さらには、その分析に時間を要したため、小学校への移動交通費が想定より少なくなった。このため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
千葉では、小学校開放事例での現地調査を予定している。また、名古屋では名古屋市周辺へ調査対象市町村を増やし、この調査分担者の転任地である大阪へも調査地を拡大して小学校開放事例の現地調査数を増やすことを予定している。両者の現地への調査旅費、およびこれの分析に用いる消耗品費で上記の使用を予定している。
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Research Products
(2 results)