2014 Fiscal Year Research-status Report
患者QOLの向上を目的とした管理栄養士の職務満足度の日米比較
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26560064
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
加藤 久美子 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 特任助教 (50721825)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 管理栄養士 / 職務ストレス / 職務満足度 / 日米比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、Karasekにより提唱された「仕事要求度-裁量度」モデルに基づき、職務ストレスの質を日米比較した。日本の管理栄養士は、現在、業務の要求度が高くとも、高いスキルと創造性が必要だと考える臨床業務に携わることで、「Active」なストレス、つまり、高い労働意欲ややりがいを感じていることが分かった。一方米国では、職務ストレスが低いものの、労働意欲の積極的向上が見られない「Low Strain」と呼ばれる者の割合も高かった。また、日本の管理栄養士は、勉強会への参加回数や、専門資格の取得が米国に比べて有意に高いことも明らかになった。つまり、日本の管理栄養士は、現在、高い労働意欲を持ち、積極的に知識やスキルの吸収に努めている現状が示唆される。 しかしながら、日本の管理栄養士は、患者の栄養管理への貢献が十分でなく、他の医療者との関わりも不十分であると自己評価しており、業務に対する満足度が低い傾向が見られた。労働意欲ややりがいが実際の行動に影響し、その行動が職務の満足度に影響するという関係が概念として提唱されていることから、労働意欲の高い日本の管理栄養士の満足度を妨げる要因が、日本の医療現場に存在することが示唆される。 また、日米両国に共通する臨床業務満足要因として、「患者の栄養管理への貢献」、「同僚の管理栄養士との関係」、「他の医療者との関係」、「給与」の4因子(15項目)が因子分析より抽出された。管理栄養士の職務満足度を測定する尺度が存在しない現在、日米比較にも対応可能な、満足度測定尺度の開発の第一歩となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、以下の2つである。1、世界の先進医療を牽引する米国と、我が国の管理栄養士の職務満足度、仕事への意欲を比較すること 2、職務満足度に両国で格差が生じる要因を明らかにすることである。この2つの目的を達成することで、我が国の管理栄養士のスキル向上、そして常に米国の医療システムを模倣している日本から脱却し、日本独自の管理栄養士の職務形態を提案するきっかけになると考えている。 平成26年度は質問票の作成、日米の管理栄養士の労働意欲の比較、また日米比較に対応可能な管理栄養士の職務満足度尺度の開発を行った。パイロット調査により、日本では97名、米国では79名からの回答を得た。調査票の検証と、現状の把握ができたが、調査方法(webアンケート法)が適していたとは言えず、データ回収に予想以上の時間がかかった。本調査の実施には至らなかった為、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度のパイロット調査にはインターネットを介したwebアンケートシステムを活用した。Webアンケートは、国内外の広範囲の管理栄養士への調査依頼や、調査コストを抑えられる点で有用であると考えたため活用を試みた。米国では、インターネットを利用した調査が普及しており、メーリングリストなども整備されていることが多く、webアンケートの利用が有効であったが、日本の管理栄養士は、インターネット上の調査に警戒心が強く、またメーリングリストなどによるネットワークが整備されておらず、活用の難しさが浮き彫りとなった。よって平成27年度は、調査方法を郵送法に戻し、本調査を行う予定である。日本では、大阪、またそれに準ずる都市部、また米国ではカリフォルニア州内の都市部の病院に調査協力を依頼し、日米それぞれで300-400を目標回収数とする。 その後、日米の管理栄養士で格差の見られる職務満足度要因を抽出し、半構造化面接スタイルのインタビュー調査を行う予定である。日米で格差の生じている要因について質的な分析を行うことで、満足度の向上、ひいては管理栄養士のスキル向上への提案が可能となると考える。 パイロット調査の結果はすでに国内学会で発表しており、平成27年度は国際学会での発表も予定している。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、調査方法にインターネットを介したWebアンケート調査を用いた為、通信費、印刷費、消耗品費の支出が大幅に抑えられた。また成果発表は国内学会にとどまった為、旅費も予想よりも低くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、調査方法を郵送法に戻す予定であり、通信費、印刷費、消耗品費、人件費の増大が見込まれる。また国際学会での発表、米国でのインタビュー調査も控えているため、旅費の増大が見込まれる。
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