2015 Fiscal Year Research-status Report
デジタル教科書のための主観的注釈による学習支援機能に関する研究
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26560125
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
池井 寧 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (00202870)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 記憶学習支援 / 主観的注釈 / デジタル教科書 / 擬人化キャラクタ / 画像アノテーション / 画像合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,学習テキストに対して,学習者が「面白さを含む文と画像」を自ら作り上げて動機づけを行い,記憶保持と再生を高めるデジタル教科書のための学習支援機能について,特性の調査を行った.具体的には,学習テキスト中で記憶したいキーワードに対して,学習者に関係した情報(身近な人物や趣味)を含むテキストと画像を,学習者が選択して合成する操作を行わせて付加すること(主観的注釈)で動機づけと記銘効率の向上を実現するソフトウェアを構成した.これらの機能を,PCおよびタブレットコンピュータに実装して,実験による効果の評価と改良を行ってきた.模擬デジタル教科書は,中等高等教育程度の社会,理科の科目の教科書を参照して独自に作成したものを用いた.評価は,模擬学習の実験を実施し,記銘効果と動機づけの効果を定量化している. 本年は,タブレット端末(iPad)での実装に重点を置いて評価を行った.趣味の擬人化キャラクタ画像として,既知の漫画の擬人化キャラクタを用いた.これを合成する手法として,記銘対象を表す画像をインターネット検索によって得た上で,趣味のキャラクタ画像を組み合わせさせて記銘させるシステムを構築した.特に,キャラクタ画像の意味的な特性として,記銘対象との整合性を持つかどうかが,記銘の効率に与える効果を調べた.その結果,キャラクタ画像と記銘対象の画像結合しやすいことが,再生率を2倍程度改善することが分った.また,主観評価としての動機づけ,および,記銘容易性も著しく高められることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習者が,記憶学習の達成度を高め,学習へのモチベーションを増加させる設計を目的としている.タブレット型コンピュータにおいて,表示された教科書中のキーワードに対して,学習者は画像の注釈を付けるが,まず,単語を選択して,それをインターネット検索する.その単語の画像として適切なものを選んでから,記銘する単語の付近に置いた上で,擬人化キャラクタの画像を合成する.擬人化キャラクタは,各人の好みにより決定するのが望ましが,評価実験では,共通の画像を,ペグ画像として用いる.漫画のキャラクタ画像をペグ画像として用いるが,それらのキャラクタが,記銘単語に対して結合しやすいか否かについて,文脈上の相違がある.そこで,両者が意味的に関係していて,記憶しやすい場合と,意味的に無関係で結び付けて記憶することが難しい場合について,比較実験を行った.また,統制条件として,画像利用の支援を用いない場合を含めて,実験参加者に記銘させた. その結果,意味的な関係があるペグ画像と記銘対象が用いられる場合が有効であり,意味的な関係がない場合よりも2倍程度再生率が高いという結果がえられた.また,意味的な関係が乏しい場合の条件では,画像を全く使わない統制条件の再生率とほぼ同じ再生率との結果となり,ペグ画像が有効となるためには,画像間の関係が極めて重要であることが明らかとなった.また,主観評価により,動機づけと記銘容易性について回答を求めたところ,本支援システムを使用することが有意に指示された.この結果がえられたことは,当初の目標の達成に相当するものであり,研究はおおむね順調に進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果により,基本的な機能とその実装方法について,有効な方式が与えられているといえる.本方式の記銘促進機能が,注釈の内容への依存性が大きいことも明らかとなってきた.従って,注釈の合成において,内容に関連する注釈を構成することが必要であるが,文脈の一般性を考えると,これを自動的に行うことは,かなり難易度の高い意味処理となる.すなわち,意味解釈は,本来,主観的な観点で選んだペグ画像を用いるため,利用者本人でないと,理想的な注釈をつくることは非常に難しい.できる限り意味的な共通性を持ちうる画像を検索により得て,利用者に選択させるのが良いと考えられるため,この構成を検索システムの機能で構成可能かを検討する.また,画像や文の 面白さの観点で候補を得るための構造について分析を行う.
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Causes of Carryover |
研究発表を行う場所として,近距離の学会を選ぶことができたことと,既存の開発装置の範囲で実験目的を達成することが可能であることが判明したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,開発ソフトウェアと開発環境を整備すると同時に,コーディングなどを外注することにより,機能の改善を図る.
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