2015 Fiscal Year Research-status Report
全層雪崩の発生予測にブレークスルーもたらす大型斜面ライシメータ観測
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26560189
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
河島 克久 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (40377205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊豫部 勉 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 特定准教授 (50397155)
飯倉 茂弘 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 防災技術研究部, 主任研究員 (30425988)
本谷 研 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (40344303)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 全層雪崩 / 発生予測 / 積雪グライド / 斜面ライシメータ / 積雪底面流出量 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)積雪底面流出量観測・融雪熱収支観測・積雪グライド観測・雪崩モニタリング:平成27年度も前年度と同様に各観測を平成28年4月まで実施した。観測期間中はWebカメラを用いて大型斜面ライシメータに異常がないか確認するとともに,定期的に現地を訪れ機器のメンテナンスやデータ回収を行った。また,大型斜面ライシメータ近傍において,積雪断面観測を2回実施した。 2)積雪底面流出モデルのモデル定数の最適化:大型斜面ライシメータの測定値の妥当性を積雪断面観測,積雪水量,土中水分量のデータを用いて評価し,補正を加えた。その後,この積雪底面流出量を真値として,モデル推定値との二乗平均平方根誤差が最小になるように非線形貯留関数モデル(新潟大学のモデル)の定数の最適化を行った。 3)グライド加速モデルの検証:小千谷市及び魚沼市で得られた全層雪崩発生時のグライドデータを解析した。その結果,グライド現象が等速度運動,等加速度運動,加速度増加運動の3つのステージから成ることが明らかになった。加速度増加運動ステージのデータに対して納口モデルに適用することによって,モデルに含まれる未知のパラメータを同定した。 4)積雪底面流出量とグライド速度の関係把握:積雪底面流出量とグライド速度の変動を比較し,グライド速度の急激な立ち上がりに注目して両者の時間的対応関係や規則性の有無を調べる予定であったが,大型斜面ライシメータ近傍で観測したグライドデータを調べた結果,グライド速度に急激な立ち上がりが現れておらず,積雪底面流出量とグライド速度の関係を明らかにすることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大型斜面ライシメータによる積雪底面流出量の観測とデータ解析は概ね順調に進展しているが、この観測点の近傍で実施している積雪グライド観測において、全層雪崩に至るデータが得られておらず、積雪底面流出量とグライド速度の関係把握の点においてやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)積雪底面流出モデルのモデル定数の最適化:2積雪期の大型斜面ライシメータのデータを新潟大学,鉄道総合技術研究所,秋田大学の各積雪底面流出モデルに適用し,モデルに含まれるモデル定数の最適化を行う。また,融雪時とROS時(降雨強度が大きい場合)とで同じモデル定数を使用することの良否やモデル定数の最適値の季節変化等に関する検討を行う。 2)積雪底面流出量とグライド速度の関係把握:積雪底面流出量とグライド速度の変動を比較し,グライド速度の急激な立ち上がりに注目して両者の時間的対応関係や規則性の有無を調べる。また,雪崩モニタリングから得られる全層雪崩発生時刻における積雪底面流出量及びグライド速度の変動の特徴を明らかにする。大型斜面ライシメータ近傍で良好なグライドデータが得られない場合は,鉄道総合技術研究所が本観測点から約10km離れた斜面で測定しているグライドデータを使用する予定である。 3)グライド加速モデルの検証:全層雪崩発生あるいはグライド速度急上昇時の複数のグライドデータを納口モデルに適用することによって,モデルに含まれる未知のパラメータの変動範囲とその原因を分析する。 4)研究総括:2積雪期の観測結果と解析結果を総括し,各積雪底面流出モデルの妥当性を評価するとともに,推定精度や汎用性の向上に向けた検討を行う。また,積雪底面流出量とグライド速度の関係及びグライド加速モデルの検証結果を踏まえ,モデルによって積雪底面流出量が高精度で推定可能となった場合,どのような道筋で全層雪崩の短時間予測が実現するかについてまとめる。
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Causes of Carryover |
河島及び伊豫部は、本研究の成果について、平成28年度に国際会議での発表や雑誌論文投稿を予定しているため、計画的に次年度使用額を生じさせた。また、平成27年度は新潟大学の基盤研究経費によって研究経費をまかなうことができたため、本研究の遂行上問題は生じていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の成果に関して、国際会議(International Snow Science Workshop)での発表や雑誌論文投稿を計画しており、この旅費や投稿料等に次年度使用額を充てる予定である。
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Research Products
(17 results)