2014 Fiscal Year Research-status Report
新規合成法による銀ナノ粒子と担体との複合化による抗微生物化衛生・医療材料の創製
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26560249
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
石原 雅之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 教授 (10508500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 伸吾 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 講師 (00505323)
宮平 靖 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 教授 (40265781)
服部 秀美 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 助教 (80508549)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノバイオ材料 / 抗微生物材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) ナノ線維様の表面構造を有するキチン担体を用いて、約 5 ± 2 nm の均一な粒径を有する銀ナノ粒子の吸着性及び安定性について検討した。キチンは正の弱電荷を有するため、表面に塩化物及び酸化物が形成されて負の弱電荷を有する銀ナノ粒子と結合することができる。特に、粒子径が小さく (100 μm 以下) ナノ繊維状模様表面構造を有するキチン微粉末は、銀ナノ粒子を含むコロイド溶液に混合することで、銀ナノ粒子と効率的に結合し、キチン/銀ナノ粒子複合体粉末の製造がキロスケールで可能となった。一方、滑らかな表面構造を有するキチンは銀ナノ粒子の吸着性は悪いことが明らかになった。さらに抗感染性創傷被覆材料として、ナノ線維様表面構造を有するキチンスポンジ等のキチン製剤へ銀ナノ粒子を直接吸着させる試みを実施した。 (2)本研究ではさらに、抗真菌 (A. Niger) や抗ウィルス活性(A 型インフルエンザ)も検討し、抗微生物活性スペクトルを確立した。さらに、感染性微生物に対する各種衛生・医療用材料として適用するため、有効な抗微生物活性に要求されるキチンへの銀ナノ粒子吸着量及び用途に応じた汎用材料に混合或いは被覆するキチン/銀ナノ粒子複合体微粉末の濃度を決定し、論文発表を行った。 3.キチン/銀ナノ粒子複合体を適用した抗感染性創傷被覆材の創製と抗微生物活性のメカニズム解明の研究を実施中である。我々はすでに、キチン/銀ナノ粒子複合体がin vitro で緑膿菌に対しても強い殺菌効果を有することを確認している。そこで本研究では、糖尿病発症 (db/db) マウスの背部に全損傷をつくり、緑膿菌を滴下して作る化膿性創傷モデルに対するキチン/銀ナノ粒子複合体の抗菌活性及び創傷治癒促進効果を肉芽組織形成、表皮組織形成及び新生血管形成を基に、組織学的に評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単純でマクロな金属単体の塊状での物性とは全く異なった金属ナノ粒子は、そのサイズや形状に依存した抗微生物学的、光学的、電磁気的、化学的特性を生じることが知られている。その中でも、銀ナノ粒子は安定な貴金属としては比較的安価に製造ができ、その物理的及び化学的性質から抗微生物剤、消臭剤、ドラッグデリバリーシステム等に応用することが可能であることを実証し、大きな注目を集めている。一例を挙げると、確立した粒径及び形状を制御する技術により製造した粒径が10 nm 以下の銀ナノ粒子は、HIV-1 やインフルエンザウィルスのエンベロープに選択的に吸着し、ウィルスを不活化させることを実証した。 さらに銀ナノ粒子はナノ線維様表面構造を有するキチン微粉末の表面に効率的に吸着し、安定したキチン/銀ナノ粒子複合体を形成する。そのキチン/銀ナノ粒子複合体微粉末のキログラムスケールでの製造法を確立し、それら複合体の抗微生物 (抗真菌、抗菌、抗ウィルス) 活性及び安定性は銀ナノ粒子単独よりもはるかに高いことを実証し、汎用衛生材料及び抗感染性創傷被覆材料への適用により実用化の可能性を認めた。加えて、感染性微生物に対する除染剤、各種汎用衛生材料、抗感染性創傷被覆材として適用するために、有効な抗微生物活性に要求されるナノ線維様表面構造を有するキチン担体への銀ナノ粒子最適吸着量、及び添加するそれぞれのキチン/銀ナノ粒子複合体微粉末の濃度についても検討した。 しかし、銀ナノ粒子の抗微生物活性のメカニズムについての検証が十分行われてなく、細胞培養を用いた細胞毒性や小動物を用いた急性炎症性等を評価・検討も不十分であり、平成27年度の課題としている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成26年に引き続いて、最適化したキチン/銀ナノ粒子複合体の製造基準を確立し、キログラムスケールでの製造を実施し、共同研究者に分配し、評価を受ける。この際必要に応じて、細胞培養を用いた細胞毒性や小動物を用いた急性炎症性等を評価・検討する。銀ナノ粒子の吸着性の悪いキチンは酢酸処理後摩砕することで微粒子化とともにナノ線維表面構造を獲得し、銀ナノ粒子の吸着性は大きく改善した。さらに、銀ナノ粒子を全く吸着しない滑らかな表面構造を有するプラスチックをプラズマ表面処理することで銀ナノ粒子の吸着性を大きく改善させる手法を確立する。したがってキチンに加えて、各種用途に応じた銀ナノ粒子の担体として適する物質の探索と担体表面構造の改変を検討する。 2.キチン以外の各担体/銀ナノ粒子複合体についても抗微生物 (抗菌、抗真菌、抗ウィルス) 活性について評価し、抗微生物活性スペクトルを確立する。さらに、感染性微生物に対する汎用除染剤や各種衛生材料として適用するために、抗微生物活性に要求されるそれぞれの担体への銀ナノ粒子吸着量、及び汎用材料に添加するそれぞれの銀ナノ粒子/担体複合体微粉末の濃度についての検討を実施する。 3.キチンに加えて、ゼオライト、アパタイト、キトサン、生石灰、活性炭等の担体/銀ナノ粒子複合体について、抗微生物衛生材料及び抗感染性創傷被覆材としての安全性、安定性、優位性を評価・検討する。また、創傷被覆材としての適用の可否を検討するため、必要に応じて培養細胞を用いた細胞毒性や小動物を用いた急性炎症性等を評価・検討する。さらに、各担体/銀ナノ粒子複合体に抗酸化剤の添加により得られると考えられる酸化ストレスの軽減についての検討も合わせて実施する。
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Causes of Carryover |
抗微生物活性のメカニズムについての研究進展と論文執筆について、少し遅れが出ており、次年度使用額が生じた。現在すでに試薬・動物等の購入準備が進められている。論文については、2報の論文をオープンアクセスのジャーナルに提出済み(1報採択、1報メジャーレビジョン)で、さらに1報準備中である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗微生物活性のメカニズムについての研究進展について、次年度使用額を使用中である。論文経費についても、すでにページチャージ等の支払いを準備中である。したがって、再び残余が生じる事はない。
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