2015 Fiscal Year Research-status Report
生体電気インピーダンスの高時間分解能測定による投球動作の判別
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26560352
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中村 隆夫 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (00249856)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体電気インピーダンス / 高時間分解能 / Cole-Cole円弧 / 投球動作 / 判別分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体電気インピーダンスの周波数特性を高時間分解能で測定できるシステムを用いて、橈骨手根屈筋の手関節側の電気インピーダンスパラメータから、以下の4つの投球動作【・通常の投球(前腕部が自然に回内)、・前腕部が強く回内する投球、・前腕部を回外する投球、・肘関節を強く伸展させる投球】を判別的中率96.7%で判別が可能である。しかしながら、このシステムがAC100 V駆動の測定機器を使用するため、装置が大がかりで可搬性に乏しく、屋外での適応は難しかった。そこで昨年度AC電源が不要であり、可搬性のあり省電力な測定装置の作製を行った。 本年度は、測定装置から出力される5つの周波数におけるインピーダンスの実部成分Rおよび虚部成分Xの10種類の信号をノートパソコンにUSB接続できるA/D変換にて同時に計測し、その後最適化数値計算によって4つのインピーダンスパラメータを算出するシステムを構築した。測定したインピーダンス値は、予め用意している素子のデータに基づいて補正を行った。インピーダンスの測定結果から算出されるインピーダンスパラメータの最大誤差は3.5%であり、これは本研究で用いる動作分析法において十分な精度といえる。 球種判定に適切な電極位置としては、これまでに橈骨手根屈筋の手関節側が第一候補であり、判別すべき直球、カーブ、シュートの基本的な前腕部など動作がこれまで判別可能であった動作と似ているものの、変化球の投球においては、ボールの握り方や手関節の使い方など個人差が大きいことがわかり、この分類を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は高時間分解能で生体電気インピーダンスを計測できるシステムを構築し、その補正方法と直球、カーブ、シュートなどの球種の判別について必要な検討を行った。 1.計測システムの構築と補正方法の検討 昨年度開発したインピーダンス測定装置から出力される10種類のインピーダンス信号をノート型パソコンにUSB接続できる16ビット、32チャンネルのA/D変換器にて収集し、最適化数値計算(KH法)によりインピーダンスパラメータであるZ0、Z∞、fm、βを算出するシステムを構築した。RC素子を測定して、パラメータの算出誤差を算出した結果、それぞれ ±0.2%、±3.5%、±2.7%、±0.5%となった。こらの誤差は、これは本研究で用いる動作分析法において十分な精度といえる。 2.カーブ、シュートなどの変化球の投球においては、ボールの握り方や手関節の使い方など個人差が大きいことがわかり、この分類を行った。これは、インピーダンスパラメータを用いた球種の精度の高い判別には重要な知見である。 3.第16回国際生体電気インピーダンス会議(平成28年6月19日~23日、スウェーデン王国ストックホルム)に本研究成果の一部を投稿したところ、採録された。 以上より、具体的な判別結果は得られていないものの、ボールの握りなどの精度の高い判別には重要な知見が得られるなど、総合的に見ておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.本研究の成果を第16回国際生体電気インピーダンス会議(平成28年6月19日~23日、スウェーデン王国ストックホルム)にて発表を行う。 2.変化球の投球については、ボールの握り方などの個人差が大きいことより、これの分類の後に、測定されたインピーダンスデータの分析および判別分析を行うべきである。また、各種変化球は一般の投球法の指導書に記載されているようなボールの回転はしていないため、できれば高速度カメラなどにより、投球直後のボールの回転軸や回転数などで、その変化球の種類を判定すべきである。 3.ボールの握り方などについて分類を行った後に、判別分析のためのパラメータとしてはこれまで同様に、ボールを加速する際に背屈が最大となる時刻から0.1,0.2,0.3,0.4,0.5 秒後のそれぞれのパラメータの変化率を用いる。
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Causes of Carryover |
今年度の経費として、有力な大規模国際学会への本研究成果発表の旅費を予定していた。しかし、生体電気インピーダンスに関する学会でもっとも注目されている第16回国際生体電気インピーダンス会議が平成28年6月19日~23日にスウェーデン王国ストックホルムで開催されることとなった。この学会にて本研究成果を発表するために、この参加費および旅費として約44万円を次年度分として繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分の直接経費約44万円を以下の項目に対して執行する。 1.印刷費に1万円、2.学会参加費に7万円、3.出張旅費として36万円を充てる。
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