2014 Fiscal Year Research-status Report
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26560362
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
古賀 俊策 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (50125712)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 深層筋の酸素動態 / 近赤外分光法 / 活動筋 / 時間分解NIRS / 酸素摂取動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
若年成人8名を被験者として、漸増負荷(ランプ)と一定強度の自転車運動時における活動筋の酸素動態[酸素化・脱酸素化(Hb+Mb)]、および総Hb+Mb量(total Hb+Mb)を測定した。新しく開発したTRS-NIRS(浜松ホトニクス、TRS-20SD)を用いて、大腿四頭筋表層部の外側広筋、大腿直筋、内側広筋、深層部に存在する中間広筋の酸素動態を連続測定することによって、運動開始時における酸素不足[脱酸素化(Hb+Mb)が増加する]の部位を特定し、さらに活動筋全体の酸素消費動態を反映する肺胞の酸素摂取量を測定した。
結果として、運動開始直後における深層筋の脱酸素化(Hb+Mb)の増加速度が表層筋よりも遅くなり(酸素不足の減少)、このメカニズムとして、活動する筋肉、とくに深層筋において、1)血管拡張がより促進され、筋微小循環レベルの酸素供給量(Q)が増加する、2)遅筋線維の動員増加が起こり、活動筋の毛細血管と筋細胞の酸素分圧差がより大きくなって、酸素が筋細胞に多く取り込まれる、3)さらに、筋温の上昇によって筋細胞の有酸素性代謝が促進することが挙げられる。
運動継続時間を規定する要因の一つである活動筋の酸素不足は、筋微小循環と細胞レベルの酸素動態(VO2とQのバランス)の不均一性、とくにVO2とQの増加速度のミスマッチによって生じる。酸素不足が減少した理由として、深層筋の酸素動態の改善が推測されるが、詳細な機序の解明が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験によれば、遅筋線維が多く含まれる深層筋では酸素供給量(Q)の増加がVo2よりも速い(海外共同研究者・Poole教授の業績)。そこで、ヒトの運動開始時では深層筋の脱酸素化[Hb+Mb]応答は表層筋よりも遅く、酸素不足はより少ない、と予想された。今回の研究では、運動開始直後における深層筋の脱酸素化(Hb+Mb)の増加速度が表層筋よりも遅くなり(酸素不足の減少)、深層筋において、1)血管拡張がより促進され、筋微小循環レベルのQが増加する、2)遅筋線維の動員増加が起こり、活動筋の毛細血管と筋細胞の酸素分圧差がより大きくなって、酸素が筋細胞に多く取り込まれる、3)さらに、筋温の上昇によって筋細胞の有酸素性代謝が促進することが推測された。したがって、深層筋がより多く動員される運動処方を開発・採用すれば、活動筋全体の酸素不足の減少と運動持続時間の延長が期待され、意義が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.活動筋酸素動態の不均一性が有酸素性持久能力に与える影響の検討 前年度の測定結果を基に、活動筋複数部位における酸素動態の不均一性がどの程度、有酸素性持久能力に影響を与えるかを検討する。
2.活動筋の酸素不足を改善する運動処方の提案 活動筋酸素動態の空間的、および時間的不均一性の機序が明らかになれば、有酸素性運動能力の評価や筋肉の機能回復訓練(持久性に優れる遅筋線維の動員増加、および筋内酸素分圧の増加)に貢献する。活動筋の酸素要求に対して酸素供給が見合う、つまり、酸素不足の減少[酸素供給(血流)の増加]を促す運動処方を検討する。
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