2015 Fiscal Year Annual Research Report
保護地域の規制やブランディングが地域社会に及ぼす影響
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26570031
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
柴崎 茂光 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90345190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上机 美穂 札幌大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00508707)
齋藤 暖生 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10450214)
深町 加津枝 京都大学, その他の研究科, 准教授 (20353831)
金澤 悠介 岩手県立大学, 総合政策学部, 講師 (60572196)
渡部 鮎美 神奈川大学, その他の研究科, 研究員 (60592954)
伊藤 幸男 岩手大学, 農学部, 准教授 (90292177)
奥 敬一 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (60353629)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然公園 / 国立公園 / 文化財 / 世界遺産 / 林業遺構 / 生物圏保存地域(ユネスコエコパーク) |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続いて統計分析を行った。今年度は、人口構成、産業構成、財政状態のデータから因子分析・クラスター分析を行い、類似したタイプの自治体間(国立公園をもつ自治体と持たない自治体間の間)で比較した。その結果、国立公園を有する自治体ほど、村内就業率が高くなり、失業率が低くなるという傾向が全般的に認められた。また国立公園の有無は産業構造に影響を与えるが、人口構成に与える影響は限定的であることが考察された。 保護地域の規制的側面がもたらす長期的な影響として、規制によって主要な価値を維持することに特化(純化)する一方で、付随する価値の劣化や消失、あるいは変質の可能性が存在していた。また既着手行為として保護地域内における森林副産物の採取に関する権利が維持されている地域であっても、高齢化による担い手不足の問題が潜在的に存在しており、多様な価値を維持することの難しさが明らかになった。 ブランド化に関する事例研究では、例えば福井県大野市の山間部で受け継がれてきた薬用植物「越前オウレン」の栽培技術は、2014年度に日本森林学会によって林業遺産に認定され、「越前オウレン」の栽培地は2016年3月に白山エコパークの移行地域に含まれることになった。オウレン栽培地が林業遺産などとして認識されたことで、今後ブランド力が高まる可能性がある。 しかしその一方で、保護地域制度のブランド力を期待するあまり、グランドデザインが十分検討されないまま、保護地域の指定・登録自体が目的化していると考えられる事例も散見された。この場合、行政的な評価を受けても、実質的な地域づくりに及ぼす正の影響は限定的なものであると考察された。
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