2014 Fiscal Year Research-status Report
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26580068
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
廣島 佳代子(加瀬佳代子) 金城学院大学, 文学部, 准教授 (60535889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
龍澤 彩 金城学院大学, 文学部, 准教授 (00342676)
王 蘭 佛教大学, 公私立大学の部局等, その他 (10725659)
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 准教授 (20454332)
小松 史生子 金城学院大学, 文学部, 教授 (60350948)
桐原 健真 金城学院大学, 文学部, 准教授 (70396414)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オカルト / 比較文学 / 文化人類学 / 宗教文化 / 美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本、中国、南アジア、オセアニア、東欧を対象に、本来目に見えないとされていた恐怖/畏怖の対象が言語化され、可視化されていった過程を追うものである。その目的は、言語化、可視化の過程でこぼれ落ちた恐怖/畏怖の根源とでもいうものをすくい上げ、人間の精神活動の多様性を浮き彫りにすることにある。 本年度は研究会を6回開催し、研究発表を通して各地の情報を共有することに努めた。(うち第2回はゲストによる発表)それぞれの専門的視点から、学際的な議論が活発に行われた。第1回から第4回までは日本を、第5回では中国、第6回ではタヒチを専門領域とする研究者が発表を担当した。 日本については、近代大衆文学における〈人獣〉の描かれ方から、合理化が進む世界への不合理性の介入という試みを読みとる「〈人獣〉の近代」、明治以降進められた仏教の近代化とそこで生じた死生観の変化を見る「『あの世」はどこへ行ったか」、中世の絵巻に「異界」と「龍宮」や「地獄」との異種混淆化をみる「『彦火々出見尊絵巻』に見る『異界』表現を起点として」の3つの発表が行われた。中国に関しては、中国と日本の近代知識人の「鬼・怪」論述を比較し、その差異が両者の近代化の違いを反映したものであるとする「『鬼・怪』を語ることの意味―周作人と柳田国男」が、また、タヒチについては、キリスト教伝来以後のタヒチの伝統的信仰の変化をイレズミの模様から読み取る「ティキを彫ることは神を可視化することか?―タヒチの偶像崇拝とその批判」が発表された。なお、インドに関する発表は、今年度最初の発表を予定している。 空間的にも、時間的にも広範囲に渡る学際的な研究であることを自覚し、研究者は積極的に活動を進めてきた。さらに研究を進め、本年度は「横断」という観点から、研究の方向性を決定することを課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「オカルト」というテーマのもとで進められる学際的な研究であり、言い方を変えれば、「オカルト」というテーマを除き、何ら共通点を持たない研究者による研究である。研究者はそれぞれ専門分野も対象地域も異なっており、何ら共通基盤をもっていない。そのため、本研究の遂行のためには、まず研究者が互いの研究領域および方向性を確認し、共通基盤を整えることが必須となる。 そこで、研究発表を通じて互いの研究領域等を確認することを本年度の全体的課題としたが、その点において、順調に研究は進展しているといえる。実際、本年度は6回の研究会を開催し、うち4回は全員が出席、残る2回もそれぞれ1名のみ欠席という、高い出席率を維持することができている。 個々の研究者についても、研究活動は順調に進められている。研究会を年6回開催するということは、各自が年1回発表を担当するペースで研究会を開催しているということである。この発表の機会を、各研究者は有効に活用している。例えば、ある程度「オカルト」研究の蓄積がある研究者は、早い時期に発表を行った。そして、研究会での議論を通して、今後の方向性を再検討し、分析対象とする資料を再考した。また、海外を対象とし、「オカルト」資料をこれから集める必要がある研究者は、発表時期を後半に設定することで、現地でテクストを収集するだけでなく、実際に儀礼に参加するなどの調査を進めた上で発表を行った。さらに、研究会には毎回ゲスト研究者を招くことで、研究者の視野とネットワークを広げることに努めた。 研究成果は別記の業績リストのとおりであり、残念ながら成果としては現れてはいない。しかし最初に述べたとおり、本年度の目的は研究の基盤を形成することであり、その成果は2年目以降に形になって現れてくると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、この「オカルト」研究が「目に見えない存在の言語化/可視化」に取り組むものであることと、それぞれの方法論を共有した。その上で今後、各研究者は担当地域や時代のテクスト、絵画など「オカルト」表象に関連する資料を収集、または儀礼に参加する現地調査を行い、その分析を進める。その成果を、これまでと同じく研究会を通して共有するとともに、各自が口頭学会で発表、もしくは論文として発表する。
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Causes of Carryover |
次年度に繰り越されたものとして、最も大きな額を占めるものが「旅費」となっているが、これは当初想定していたよりも1回の旅費が安くすんだことが理由となっている。残金を次年度に繰り越す理由は以下のとおりである。「オカルト」研究の性質上、儀礼や祭式に参加することが必要となるが、そのためには先に現地コミュニティにおいて信頼関係を築くことが必須である。そのため、1回現地調査をしただけでは調査しきれないことが多々残されており、再度現地調査を行う必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外に現地調査に向かう必要がある研究者の渡航費として利用する。
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