2014 Fiscal Year Research-status Report
前近代における地震活動期の研究ー15世紀後半と16世紀末・17世紀初頭を中心にー
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26580129
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
矢田 俊文 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40200521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 瑞穂 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 特任助教 (60583755)
小野 映介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90432228)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鎌倉大日記 / 1495明応関東地震 / 鎌倉 / 1596慶長伏見地震 / 隆起 / 塩田 / 伊勢早雲 / 阿波国撫養 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度の成果は、以下の2点である。 1、従来疑問視されてきた明応4年(1495)8月15日に鎌倉を地震津波が襲ったとする『鎌倉大日記』の記事が信頼できるかについて検討を行った。その結果、『鎌倉大日記』彰考館本の原本における明応4年を含む応仁元年頃~文亀元年の年代記記事の大部分は、後柏原天皇の在位期間とくに文亀元年直後の頃に加筆されたこと、加筆者は当時鎌倉あるいはその近辺に住んでいた可能性が高いこと、明応4年9月の伊勢早雲小田原攻略の記事を否定する根拠はないことを明らかにし、『鎌倉大日記』の明応4年の鎌倉地震津波の記事は信頼できることを明らかにした。 さらに、『鎌倉大日記』によれば、15世紀に鎌倉かその近辺で大きく揺れた「大地震」は6回あったこと、元禄地震・大正地震ではそれぞれ1mほど隆起したとされる江の島は、『鎌倉大日記』によれば明応4年の地震では沈降したことを明らかにした。 2、1596年慶長伏見地震の際に、現在の徳島県鳴門市の撫養地区が隆起し,入浜塩田を営むことが可能になったとする史料が存在するので、史料に書かれた内容の信ぴょう性について地形・地質学的な側面から検討を行った。入浜塩田では潮の満ち引きを利用して製塩を行う。したがって、その立地は地形条件によって制限される。撫養地区の塩田が鳴門南断層の上盤に広がっている点、塩田の開発域の南限が鳴門南断層とほぼ一致している点、16世紀に鳴門南断層が活動し0.5~1.0メートル の上下変位を生じたと考えられることなどを勘案すると、地震性隆起が塩田開発の契機となったとする文書の記述内容は事実である可能性が極めて高いことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の1つは、明応4年(1495)8月15日に鎌倉を地震津波が襲ったとする『鎌倉大日記』の記事が信頼できるかどうかを検討するもの。2つ目の計画は、文禄5年(1569)閏7月13日に起った地震(いわゆる慶長伏見地震)によって、阿波国撫養地域(徳島県鳴門市)が隆起し塩田になったことが記されている文書が信頼できるかどうかを検討するものであった。 『鎌倉大日記』の記事については、文献調査と分析により、概要で記した理由から『鎌倉大日記』の明応4年の鎌倉地震津波の記事は信頼できることを明らかにした。また、阿波国撫養地域(徳島県鳴門市)が隆起し塩田になったと記される文書の記事についても、地形・地質学的な側面から検討を行い、概要に記したように、地震性隆起が塩田開発の契機になったことを明らかにした。 このように、『鎌倉大日記』の明応4年の鎌倉地震津波の記事は信頼できること、また、阿波国撫養地域(徳島県鳴門市)が隆起し塩田になったと文書に記される記事が信頼できることを明確にしたことは、当初の計画とおり研究が進んでいることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.年度内に2回の研究打合せ会を開催し、最終年度の作業についての綿密な打合せを行い、年度前半に地形・考古資料・文書調査を行い、文書については記載された文字を読み取る作業を行う。秋の打ち合せ会では地質試料年代分析・考古資料、文書の総合化により、確実に地震によって隆起した資料を確定し、地形復元作業を行う。 2. 最終年度である27年度は徳島県撫養地域の検討を中心に行うが、26年度に徳島県撫養地域で地震性隆起と推定できる地形を確認できたので、徳島県撫養地域での成果を確実なものとしたい。また、明応4年(1495)の地震が起こったことを明らかにするために三浦半島地域等で資料調査を行う。さらに、徳島県撫養地域が隆起した16世紀末だけではなく、15世紀後半、17世紀末から18世紀初頭、19世紀後半の地震活動期の文書等の分析も行う。
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Causes of Carryover |
調査予定地と研究対象史料を検討するなかで、26年度に本格的な調査をするよりは、最終年度の27年度にまとめて調査地での調査と研究対象史料の本格的検討をするほうが研究遂行上効果的であると判断したため、当該研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額と27年度の研究費を合わせて、本年度の調査によって見出した徳島県撫養地域の調査地点等の現地調査のための旅費、資料購入費として使用する。
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Research Products
(6 results)