2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化のもとでの行政不服審査制度の新パラダイム
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26590004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 誠 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00186959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 裕幸 信州大学, 経済学部, 准教授 (60598332)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 行政不服審査制度 / グローバル化 / 食品安全規制 / 出入国管理 / 国際取極め / 間接適用 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.日本法について、昨年度に引き続き,グローバル化による影響について調査するための基礎作業として,斎藤・大江ともに一般法である行政不服審査法の改正内容を精査し,その内容と特徴,解釈・運用上の課題を明らかにした。 2.大江は、オーストリア法を素材に,昨年度の関税,知的財産分野の水際規制に引き続き,(1)食品等の安全規制分野,(2)出入国管理分野について検討を加えた。食品の安全規制分野,出入国管理分野につき,グローバル化の影響により不服申立制度に直接に変容が生じたという事態は見受けられず、いずれの分野でも制度自体に大きな変革が見られたが,それは行政裁判制度改革という、それ自体は,ヨーロッパ人権条約の要請に応答することを一つの目的としたものとはいえ、専ら権利救済制度一般に関する国内法の事情に対応するものであったことを明らかにした。昨年度の関税,知的財産分野の水際規制との対比において、来年度の分野設定ととりまとめに向けて、有益な視座が得られた。 3.斎藤は、行政不服審査の審査内容における国際取極めの影響という論点を深掘りすべく、近時日本の裁判所が国際取極めをどのように取り扱っているのかを中心にこの問題にアプローチを試みた。裁判所における,その「国内適用」「考慮」「参照」について、国際取極類型もふまえ,国内法との関係を精査し,訴訟類型による差違の分析にも取り組んだ。 4.ドイツ・イギリスにおける行政不服審査制度とそのグローバル化による影響について文献調査及び斎藤・大江の研究会合により、翌年度のまとめにむけて、深掘りする個別行政分野及び分析手法の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、第一にグローバル化のもとでの行政不服審査制度の変容を具体的に検証するため、オーストリアについて、食品安全、出入国管理分野での調査研究を順調に進めることができた。 第二に、国際的な基準を国内行政争訟においてどのように取り扱うかについて、日本の裁判例を中心に検討を加え、基準・争訟の類型化につき研究を深めることができた。 第三に、ヨーロッパにおける、行政不服審査制度に対するグローバル化の影響について文献精査によって、日欧比較のための基盤となる知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、オーストリア・ドイツについて、27年度までの成果をふまえ、グローバル化による行政不服審査制度の変容に関する実務と理論の最新動向を把握する。 第二に、ヨーロッパにおける、行政争訟における国際基準の位置づけにつき、27年度の成果をふまえ、ドイツを中心に、考察を進める。 第三に、グローバル化のもとでの行政不服審査制度のあり方につき、日本の今後の制度設計も含めて、検討を加え、本研究全体の成果をとりまとめる。
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Causes of Carryover |
1 研究代表者(斎藤)に交付された旅費について、本年度は国際基準に関する日本の判例・実務の分析を先行させ、その成果をふまえて欧州における当該論点に係る調査研究の実施を行った方が良いことが明らかになったので、次年度使用額が発生した。 2 研究代表者及び研究分担者(大江)に交付された物品費について、当初購入を予定した書籍のうち、本年度中に調達できなかったものがあるため、若干の次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度も、欧州を対象とした行政不服審査制度の調査・研究が研究対象に含まれているので、次年度使用額については、物品費・旅費ともに次年度交付金とあわせて使用する予定である。
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Research Products
(3 results)