2015 Fiscal Year Research-status Report
持続的生態系サービス管理を実現する実践的構想と協働管理システムの環境社会学的検討
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26590089
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
富田 涼都 静岡大学, 農学部, 准教授 (20568274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 真弓 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (70509207)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 駿河湾 / サクラエビ / プール制 / 資源管理 / 漁業管理 / 公害問題 / 生態系サービス / コミュニティベースマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から引き続き、本研究の核となる生態系サービスの生成と持続に関する駿河湾のサクラエビ漁業に関する事例研究を進めることができた。サクラエビ漁業、特に「プール制」と呼ばれる出漁と漁獲についての共同操業と、収益を漁業者間で等しい割合で分配する特殊な制度の成立前後の時期についてのインタビューや、資料の収集と分析、また理論構築のためのヒントの探究を進めた。 具体的には「プール制」の成立には田子の浦ヘドロ問題や富士川火力発電所などの一連の駿河湾周辺における公害問題の発生が、大きな外的要因となっていることが明らかになったほか、富士市周辺における公害に対する市民活動の隆盛と連携もそれを促進した間接要因にもなっていることが、資料的にも確認された。一方で、そうした外的要因だけでなく、それ以前の時期に、漁業の技術革新が発生し、漁業者間の競争の激化したことや、他の湾内漁業の経営悪化などの内的要因の存在も示唆されるようになった。また、プロセスとしても、幾人かの先駆的な漁業者が試行しているなどの詳しい状況が少しづつ明らかになりつつある。また、遠州灘・浜名湖の同時代的な沿岸漁業や、宮崎県綾町における森林や河川などの他の生態系サービスに関する変遷も調査し、比較研究の基盤を整えている。 一方、こうした漁業管理が漁業者自身によって構築されるプロセスにおける政府(自治体)の役割や専門家(科学知)の役割についてはまだ調査が本格的には進められていない。当時をよく知る関係者に故人が多いことや一部では資料の散逸も見られるため調査上の課題もある。 しかし、こうした要因やプロセスが明らかになることによって、コミュニティベースの漁業管理(生態系サービス管理)の可能性や、環境汚染等の外的要因に対するレジリエンスの発動要件などの分析が理論研究と共に可能になり、より普遍的な生態系サービスの生成と持続の実証的な理論構築に近づいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の核となる駿河湾・サクラエビ漁業の漁業管理に関する事例研究を進めることができ、結果の分析に着手することができた。依然として関係者が故人となっている例が多いことや、一部での資料の散逸などの課題が存在しているが、多面的な資料調査などを企画し、フォローができるように努めている。その結果として、生態系サービスの生成や持続に関しての実証的な理論構築の基盤を整えつつある。また、一部の成果は学会報告などを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度になるため、調査を継続しつつも研究成果の発表をつうじて本研究の到達点を見定めるとともに、今後の課題の整理および次の研究プロジェクトの準備につなげたい。事例研究の成果を分析し、生態系サービスの生成と持続に関する実証的な理論構築につなげるための検討を進めるほか、研究成果については、国際学会でも報告し、成果の国外に対する発信も行う。 また、台湾等を念頭にした国際的な技術移転の調査については、より広範な研究課題の発見につながっているため、別途研究プロジェクトを立ち上げることも含めて発展的な検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
当時を知る関係者に故人が多かったなど、インタビュー可能なインフォーマントが当初の計画よりも少なく、結果的にテープ起こしのための費用が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の国際学会発表のため、研究分担者との綿密な打ち合わせを行うための旅費および英文の校閲費用として使用する。
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Research Products
(8 results)