2016 Fiscal Year Research-status Report
臨床・教育場面におけるトラブル事例の実践分析~帰属バイアスの相互解消に向けて
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26590122
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡本 雅史 立命館大学, 文学部, 准教授 (30424310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山川 百合子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (40381420)
松嶋 健 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (40580882)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタ・コミュニケーション / 当事者研究 / 地域精神保健 / 共有基盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の活動として、代表者岡本は発達障害当事者と周囲の定型発達者との会話場面における「メタ・コミュニケーション」に焦点を当て、当該概念の認知語用論的再検討を行った。特に、メタ・コミュニケーションが動的な「フレーミング」による「境界づけ」と「方向づけ」の二つの機能によってコミュニケーションの場を多層化し、参与者たちの認知と相互行為のインタフェースとなっていることを明らかにした。この成果は査読付き論文誌に掲載された。さらに参与者間の共有基盤構築に着目し、課題達成対話を始め、研究者間のコミュニケーション場面においても参与者の共有基盤が言語・非言語的な手段を用いて構築される様を詳らかにし、障害を巡るコミュニケーション場面分析に繋がる手がかりを得た。これらの成果は複数の学会や研究会で報告された。 一方、今年度から分担者となった松嶋は、自身の専門領域であるイタリアの地域精神保健の人類学的視点を基に、幻聴に関する日伊比較分析、およびイタリアで開催された当事者研究ワークショップの参与観察を行い、障害当事者と非当事者の非対称性を超克するための新たな認知フレームについて検討を行った。この成果は内外の学会での研究報告やシンポジウム等で発表され、その知見が共有されつつある。 また、分担者山川は茨城県立医療大学付属病院を拠点に精神保健実践に取り組みつつ、高次脳機能障害を抱える患者と家族への集団療法や、社会的行動障害への臨床心理士の介入の効果等について研究を行っているが、研究の継続という観点から次年度に成果報告を行う予定である。 最後に研究協力者松岡は、地域臨床の観点から、継続的に自身が代表をつとめる蒲田寺子屋を拠点として高次脳機能障害者に対するリハビリテーション活動ならびに家族会活動の支援などを行った。特に、高次脳機能障害に関わる地域連携を東京都大田区での活動を元に考察し、雑誌論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施初年度より談話テキストのトランスクリプション作業を担当していた研究支援員が2016年度途中で退職し、データ整備が当初計画より遅れているため、1年補助事業期間を延長することとした。また、分担者山川が予定していたデータ収録計画が諸般の事情により進捗せず、それらも含めて延長した最終年度に持ち越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長後の最終年度となる平成29年度は、これまで進めてきた理論と実践の相互往復による障害を巡るディスコミュニケーション研究を総括するため、認知語用論、医療人類学、地域精神保健の観点からのディスコミュニケーション・モデルの再規定を行う。特に、最終年度報告として本研究プロジェクトの主催によるシンポジウムを開催する予定にしているが、外部から自閉スペクトラム症者と定型発達者との会話場面を分析しているゲスト講演者を招聘し(既に了承済み)、研究プロジェクト内で閉じることなく、オープンなディスカッションの場としてデザインすることを主眼としている。その中で、発達障害者と定型発達者とのリアリティの違いを認知面と行動面の両面から探求し、ディスコミュニケーションが認知やさらにそのベースにある知覚や感覚の差異とどのように関わっているかの討議を通じて、より具体的な実践理論の構築を目指したい。
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Causes of Carryover |
代表者岡本は資料整理およびデータ入力として研究支援員を雇用しているが、当該研究支援員が自己都合により年度途中で退職したため、データ整備を繰越しせざるを得ず、事業期間延長および次年度使用額が生じた。一方、分担者山川は、予定していたデータ収録が諸事情によって実施できなくなり、その結果データ取得や結果のまとめのためのミーティング等の旅費が必要となったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
代表者岡本は上記の理由により、前年度予定していた作業を新たに雇用する研究支援員に実施してもらう予定であるため残額を人件費に一部充当する。また事業期間延長に伴い、分担者松嶋の旅費の捻出、およびシンポジウムでのゲスト講演者への謝金にも残額を使用する。一方、分担者山川は残額を全て、茨城県内でのデータ取得、およびプロジェクト会合(東京、京都)のための旅費に充当する予定である。
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Research Products
(10 results)