2014 Fiscal Year Research-status Report
「青色効果」の検証:青色環境は認知,心理,行動にどのような影響を与えるのか?
Project/Area Number |
26590131
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小島 治幸 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40334742)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 色 / 照明 / 環境 / 心理 / 認知機能 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
世間では,近年,青色灯の設置が増え,青色が競技や学習成績のパフォーマンスを高めるとの言説がしばしば聞かれる.しかし,青色という色彩が人間の行動に与える効果を明確に示した報告はない.このため本研究では,主に,青色照明および青色を用いた環境が,他の色彩環境かと比べて人の心理や行動に特別な効果を持つか否かを比較検討することを目的としている。H26年度は,まず,色彩が人の心理的行動に異なる影響を示すことを報告した先行研究の一つであるMehta & Zhu (2009)の研究の追試を行なった。 《方法》【装置・色彩環境・刺激】 暗幕で区切られた実験室内にマルチカラーLEDシーリングライト(TOSHIBA, LEDH82718X-LC)によって室内照明を施した。照明には3つの色彩条件を用いた。机上での照度は赤色61 Lx,x-.52,y=.32,青色44 Lx, x=.90,y=.13, そして白色20 Lx, x=.28, y=.32であった。心理行動成績を調べるための課題/問題はPC(SOTEC, )上のソフトウエアE-prime2.0によって制御され,CRTモニター(DELL, )に呈示された。【手続き】参加者は実験室内でモニターの80cm前に楽な姿勢で座った。参加者は呈示される課題に対して,求められたテンキーを押すか解答用紙にペンで解答した。課題には1.記憶課題,2.文字判断課題,3.気分評価課題,4.想像課題,5.熟慮性-衝動性尺度課題(質問紙尺度)を実施した。【参加者】正常色覚を持つ60名の学生が参加した。20人ずつ照明3条件に無作為に振り分けられた。 《結果》文字判断課題において,赤色条件の判断反応時間が青色条件より短い傾向が見られた。また想像課題において赤色条件での反応時間は白色条件よりも有意に早かった。しかし,その他の課題における成績に有意差は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において検証を目指している問題(「青色効果」)に関して,先行研究の報告結果は分かれており,また実験状況も様々である。このため,本研究では色彩が心理過程や認知機能,動機付けや社会的行動などのどのような側面に影響を与えるのかを捉えることが目的となっている。そしてそれが行動的,生理的指標においてどのような変化となって現れるかを明らかにすることを目指している。このような研究目標のもと,H26年度の研究では,まず,先行研究において報告されている心理的認知的機能への影響を行動指標による再検証を計画通り実施した。結果は,仮説通りではなかったが,研究の実施と到達度については,今の所,概ね計画通りの研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の実験の結果は照明条件の効果の現れ方が仮説通りではなく,また一貫したものではなかった。その結果はむしろ,青色よりもむしろ赤色が反応性を高める傾向を示した結果であったと言える。つまり,これまでのところ青色の一貫した効果は得られていない。この結果を受けて,今後,これまでとは異なる課題,例えば動機付けや社会的行動機能を計測するための課題を導入して青色環境の認知機能への効果の有無をさらに検討してゆく予定である。そして,それらの色彩環境の効果を,1.行動的指標(課題成績)の計測に加えて,2.生理的指標(心拍,血圧,脳波,脳血流など)の測定を導入し,複数の指標を同時に計測することによって青色色彩環境における人間行動の変化について検討し,「青色効果」の有無を検証してゆく予定である。
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