2016 Fiscal Year Annual Research Report
Modern maturation: The concept and its conditions
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26590136
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
遠藤 由美 関西大学, 社会学部, 教授 (80213601)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 現代の成熟観 / 親同居 / 生活基盤の構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の成長モデル,すなわち学校教育卒業後職を得て自活し完全に自立していくというスタイルが崩れたこんにち,現代の成熟観を検討するため,昨年度の未婚者調査とほぼ同様の項目を用いて,20歳から44歳までの男女既婚者から資料を収集した。その結果,男女とも結婚しても自立していると自認できない者が一定の割合でいることが判明した。既婚者と未婚者を合わせた全体(n=10, 900)の分析では,どの年齢層群においても,約40~60%程度が親との同居であった。それらは,無職を含み相対的に低収入で,住居費や生活費を自力でまかなうことが困難であり,親から受ける経済的支援が親同居の理由となっているケースが多かった。同居群の本人年収は平均でおよそ200万円であり,非同居群とは約100万円以上の開きがあった。しかし,親同居という居住形態は,単に経済的支援を受けるに留まらず,家事依存や精神的依存にも結びつきやすく,彼らは大人自認度や自信が低く,NH(ニート引きこもり)指数が高く,将来展望も否定的な傾向が見られた。また同居群の世帯収入は非同居群に比べて高いものの,1人あたりに換算した収入には110万円を超える違いが見られ,同居群では200万円を大きく下回っていた。同居群は親の暮らしぶりも非同居に比べて生活にゆとりがないと回答する傾向があり,貧困の再生産の過程で子世代が自立能力の獲得困難に陥る傾向が見られた。一般に年齢とともに親同居率は低下するが,自立群に比べて非自立群は,既婚の高齢グループ(40-44歳)においても親同居率が高く,高齢の親からのさまざまな支援への依存が自立自認の抑制要因となっている。従来の成長モデルでは経済的自立はほぼ保証されていたため精神的自立が注目されていたが,現代では大人であることの不可欠条件として生活基盤の構築を挙げる必要のあることが示唆された。
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Research Products
(1 results)