2014 Fiscal Year Research-status Report
教育政治学の創成-教育と政治の新たな関係把握をめざして
Project/Area Number |
26590186
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小玉 重夫 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40296760)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 祐介 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00423434)
荻原 克男 北海学園大学, 経済学部, 教授 (70242469)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | シティズンシップ / 公共性 / 政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、従来の教育学の分析枠組みを教育政治学の分析枠組みへと転換させるための土台づくりを以下の4つの方法によって行った。 第一に、教育実践が政治とどのように相互浸透しているかを、アメリカおよび日本のシティズンシップ教育の展開に即して分析した。文献や資料収集による研究に加えて、アメリカにおける研究協力者・機関(Harry Boyte Co-Director of Center for Democracy and Citizenship ,Augsburg College, Minneapolis, Minnesota, USA)とのコラボレーションを行い、著書を刊行した。また、日本における実践のフィールドは、小玉が現在代表をしている日本シティズンシップ教育フォーラムと連携して、そこに参加している教員や実践家との協働を行った。 第二に、戦後教育学(戦後教育行政学や教育権論を含む)の歴史的展開を対象として、教育学はなぜ、どのように脱政治化していったのかを歴史的に分析する作業に着手した。 第三に、教育が再政治化する今日的局面を検討した。特に、教育の再政治化をめぐる最重要の論点である首長主導の教育改革に関する分析を行った。 第四に、以上三つの課題の成果を付き合わせつつ、教育政治学の分析枠組みの形成をめざした研究会、あるいはシンポジウムを、8月の日本教育学会大会と、1月の名古屋大学訪問において行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アメリカにおける研究協力者・機関(Harry Boyte Co-Director of Center for Democracy and Citizenship ,Augsburg College, Minneapolis, Minnesota, USA)とのコラボレーションは、単なる共同研究にとどまらず、著書の刊行にまで至ることができた。具体的には、Shigeo Kodama “Higher Education and Political Citizenship: The Japanese Case”, in Harry Boyte(ed.), Democracy'sEducation: Public Work, Citizenship, and the Future of Colleges and Universities, Vanderbilt Univ Press, 2014.12., pp.221-225を刊行した。 また、1月28日に名古屋大学を訪問し、本科研からは小玉重夫、村上祐介、荻原克男が、また、名古屋大学からは、荒見玲子准教授、小野耕二教授、田村哲樹教授の三氏が参加し、教育学と政治学の共同可能性について議論を深めることができ、政治学との連携可能性を現実的なものとすることができたという意味で、当初予定した以上の進展を見ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の成果をふまえて、教育政治学の分析枠組みを、上述した4つの方法による作業を継続させつつ精緻化していく。特に、上述のCenter for Democracy and Citizenship とのコラボレーションを継続しつつ、連携の対象を他の海外機関、研究者にも広げる。さらに、その作業と並行して、教育政治学の理論枠組みを現実の政治分析に適用する作業を試みることによって、規範・実践の学と実証科学とに分離してきた現代政治学のパラダイムを革新しうるような分析の視角を提示する。 この点については、すでに荻原が規範と実証の統合に関する研究を発表しているので、それをもとに、近年の研究成果をできるだけ大量に吸収して、理論的なベースを構築する。また、小玉が教育思想・哲学の視点からシティズンシップ教育にアプローチし、村上が教育行政学の視点から首長主導の教育改革にアプローチし、両者の知見を付き合わせることによって、教育政治学による規範と実証の再統合の実例を導き出す。それによって、現代の社会科学に、規範性と実証性を兼ね備えた新たな分析視角を提示することをめざす。
|
Causes of Carryover |
本年度に遂行予定であった名古屋大学との共同研究に予想外の進展が有り、その成果をを次年度以降に繰り越して発表する必要が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
名古屋大学との共同研究の成果を、お茶の水女子大学で開催予定の日本教育学会第74回大会において発表予定である。
|