2014 Fiscal Year Research-status Report
英国独立学校のパストラル・ケアに関する質的研究―包括的ケアの分析を通して―
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26590222
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
古阪 肇 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20710536)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 英国独立学校 / 英国パブリック・スクール / グレート・スクールズ / パストラル・ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、英国の大学進学率の上昇や難関大学への合格が年々難しくなってきている状況が見られる。従来人格陶冶を教育方針の要としてきた独立学校(いわゆるパブリック・スクールを含む)においても、進学準備校としての役割を担うことが、最重要課題として認識されている。一方、近年益々深刻化する若年者の自殺やいじめ、薬物乱用などの諸問題が蔓延し、心のケアの必要性に注目が集まってきている。このような状況に鑑み、本研究では英国独立学校における、「進学準備校」および「紳士養成校」としての両役割の間で現在重要視される「パストラル・ケア」に焦点を当て、その実態と重要性について検証することを目的として研究を進めている。 平成26年度は、文献調査を中心に進め、先行研究の整理を行った。また、一部であるが、英国パブリック・スクールの管理職に就く教員がどのようにパストラル・ケアを捉えているかについても調査することができた。当該年度における調査を通して、主たる成果を概ね次のように整理することができる。 ①論文としてまとめられたパストラル・ケアの研究は非常に希少であり、独立学校を対象としたものは管見の限り著しく限定的であると。 ②クラレンドン委員会報告書を入手できたことで、19世紀半ばにおけるグレートスクールズ(ザ・ナイン)と呼ばれる9つの学校群の果たした役割を詳細に捉えることができたこと。その中で、パストラル・ケアを歴史軸で捉え直すと、当時のケアの概念と、現代との相違点について認識することが可能になったこと。 ③パストラル・ケアの概念は各学校のみならず生徒の指導に当たる教員個人によっても捉え方に差があり、どのような要素をパストラル・ケアの範疇に含むかについても認識に差異が認められる。ただし、パストラル・ケアが当該校における教育においてきわめて重要な役割を果たしているという点は共通認識として捉えられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、現地での資料収集を含め、海外の文献調査を網羅することに時間を要することが挙げられる。特に文献調査においては、パストラル・ケアの歴史的変遷を包括的に捉えることに時間を費やしている。また、2月、3月に予定していた2つの海外学会発表および英国での面接調査の日程が、本務校の移動があり、学会発表はキャンセルに、面接調査はタイトな日程となったことが挙げられる。3月に実施した英国出張では、本研究の遂行のために費した日数が当初の計画より非常に限定され、当該期間において、面談調査や訪問調査を含む現地調査を、英国パブリック・スクールおよびパストラル・ケアに関する資料調査に焦点をシフトして取り組むこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度中に国内の学校への訪問調査および英国への現地調査を続行し、半構造化インタビューを実施する。これにより、パストラル・ケアの現状を明確に把握し、各学校におけるケアの捉え方や問題の解決方法について具体的に把握することができるようになる。 また、現地における資料収集を継続する。主な調査機関は大学図書館と独立学校の関連施設を予定している。当該作業により、現在を辿る歴史軸の中で英国独立学校のパストラル・ケアの重要性とその変遷を探求することができる。 さらに質問紙調査をまとめ、総括となる成果を国際的な視点から論じる。最終的に、現代日本の教育的課題を比較対象とし、学校におけるパストラル・ケアをめぐる問題の解決策を講じる。
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Causes of Carryover |
主たる理由は、本務校が変更になり、予定していた2月開催の国際学会(香港比較教育学会)および3月開催の国際学会(CIES)への参加を見合わせることになった点である。第二に、3月における海外調査において、日程が当初の予定より短縮されたことが挙げられる。第三に、インタビュー協力者への謝礼として、物品を用意したが、いずれも自費で賄い、1年目の謝金・人件費は特に計上しなかったことが要因となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、前年度に参加できなかった費用を主に国際学会での研究発表の参加費、および実地調査に当てる所存である。
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