2015 Fiscal Year Research-status Report
大学留学生による初等・中等学校支援事業への参加:支援モデルの構築
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26590224
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Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
江原 智子 環太平洋大学, 教育学部, 講師 (20635255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 聡 環太平洋大学, 教育学部, 教授 (00723959)
オチャンテ カルロス 環太平洋大学, 教育学部, 講師 (20617576)
ウォルシュ アンソニー 環太平洋大学, 教育学部, 講師 (40617578)
長野 真澄 環太平洋大学, 教育学部, 講師 (40633699)
小嶋 隆宏 (小嶋隆宏) 環太平洋大学, 教育学部, 教授 (70727635)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大学留学生 / 公立小・中学校 / 学校支援ボランティア / 外国籍児童 / 言語・学習支援 / 多文化・国際理解活動 / 受容と協働 / ポートフォリオ |
Outline of Annual Research Achievements |
「留学生の学校支援ボランティア」事業は2年目に入り、学校現場・教育委員会ともに、昨年までの実績を踏まえ、留学生の地域資源としての価値意識を深め積極的活用へと意識が変化している。当初は派遣する側も留学生の学校での支援の内容や懸案(言語・文化等の問題)について心配したが、留学生は期待以上の貢献と成長を見せている。貢献の内容は主に以下の3項目に分類される。 1.異文化・国際交流:特に小学校において学年を問わず、直接的な国際交流の場として積極的需要があり、継続的な実施の中で、現場からの提案を加味した実施ができた。一例では複数回での交流が可能であるとして、児童自身に内容を考えさせ、交流した人物の国を調査学習の後、発表・質疑応答へと繋げ成功を見ている。交流回数を重ねる中での意識や関わり方・心情の変化を追うため、留学生・児童・現場教員に前後での質問紙調査を行った。留学生の報告にも、日本の学校教育と自国を対比し、児童の活動姿勢から、自身の関わり方を見直すなど、顕著な成長の様子が見られる。 2.外国籍の児童への言語・学習支援:地方都市にも外国籍の移住者が増えており、同行した子どもを公立小学校に入れる例が増えている。受け入れ側の学校のニーズ、支援される児童との相性など、多彩な点での考慮が必要である。個別支援であり、留学生が独りで関わる場が多く、児童理解や学習支援などで、留学生の知識や精神状態を含む大学側教員からの支援も検証すべき点となる。大学教員は、書面と対面で個別に留学生に寄り添い、その成長・変化について学内論文で報告している。留学生の成長という点から、当研究の挑戦的テーマに関わる1つの成果と言える。 3.中学校におけるTA活動:中学校では知己の教員から個別の要請を受け、平成28年1月に全4回の授業のTA活動を行い、ALTと教科担任との間の立場で関わることで、生徒・教員の感想を質問紙で調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、年度半ばに研究代表者が入院し、後の療養も含め直接の主導が一定期間できなくなったことが大きい。年度当初は各部門の責任者を中心に学会発表・論文投稿の計画と、期末には、中間報告用冊子の出版を予定していたが、作業の取りまとめが不可能となり、全体で中間報告としての学会発表が3件と学内紀要への投稿1件に留まった。同1大学の教員を各部署に2名配する体制でこのような事態に対処する予定であったが、内部の学部編成などもあり、代表者なしで調査データのとりまとめや発表・出版を奨めるシステムが脆弱であった。反面、支援活動は多くの介入を要せず継続できた。当研究の効果は経年的な活動記録に基づくものであり、2年目で支援活動の自動化が見られたことが大きい。
事業そのものは経年実施であるため、前年度の活用校やその話を聞いて新たに活動要請をする例や共同研究者の知己からの依頼なども含め、新たな活動の形態と利用者からの自然発露的に工夫提案も散見された。継続可能な活動に定着するまで、このような支援の提供側と受益側の試行錯誤を伴う活動実績が、活動の自動化を促す必須条件と考えられる。また、前年度の実績を踏まえ、教育委員会や現場教員の理解が更に深まったことも大きな要因と言える。前例のない活動に関して学校現場は閉鎖的になりやすい。しかし一旦理解が得られると、能動的に関わってくれる。それは安心と信頼を提供できるためであり、そのためにも継続的で組織的な活動として進めることに価値があると考えられる。
これらの事から、当該事業のような活動では、時間をかけて前例となる活動事例を重ねることが必須であると同時に、これを単なる活動ではなく研究領域として進めるための組織立てを再考する必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目に入り、上記の活動履歴を踏まえ、通常のチラシなどの配布物での学校支援の告知だけでなくWebサイトの作成に入っている。実際の貢献の内容を、留学生や児童の感想やs写真をつけて配する。また、中学校における活動の事例を踏まえて、赤磐市の中学校長が興味を示している。過去2年間で国際交流を経験した児童も中学生になり、更なる継続性と効果が期待される。これらをいったん取りまとめ、調査対象とする。
同時に、1大学が貢献できる範囲と制限も見えつつある。派遣可能な範囲や時間帯など、具体的懸案が出ており、支援活動の効果調査というソフト面と同時に、事業を継続させるうえでの必要事案を精査し、最終年度の報告内容で提示したいと考えている。
研究概要にもあるように、大きくは1)学年団を主対象とした国際理解と国際交流、2)外国籍・外国言語を主とする児童・生徒への個別の言語・学習支援、3)中学校における授業へのTAとしての留学生派遣、が中心となり、認知されてきている。まずはこの3つの活動の視点から、各事例と留学生からの報告書の兼ねるポートフォリオの分析を通して、また質問紙による経年的な意識や行動の変化を重ねて考察する。現場教員や教育委員会へのインタビューも実施する予定であり、当活動研究の意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
謝金に関しては、留学生学校支援ボランティアの要請要請数を見込みで計算したが、おおむね見込みの通りで推移している。旅費・物品費に関しては、研究の進捗状況で示したように、研究発表・論文投稿が少しく滞った経緯があり、その分の繰越額が発生した。また報告冊子の出版では論文執筆・集約、また出版費用に関しての見込み違いもあり、最終報告書出版とWebサイトの作成用として3年目にほぼ全額を繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3年目の課題は現在までのデータの集約と考察、それを踏まえた学会発表及び論文投稿、最終報告書の出版にある。そのための学会参加費用、旅費、出版費用などを見積もっている。また学校支援ボランティアの派遣は3年目も継続する為、個別支援及びTA活動のみを対象として謝金を支払う予定である。
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Research Products
(4 results)