2016 Fiscal Year Research-status Report
大学留学生による初等・中等学校支援事業への参加:支援モデルの構築
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26590224
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Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
江原 智子 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (20635255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 聡 環太平洋大学, 次世代教育学部, 教授 (00723959)
オチャンテ カルロス 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (20617576)
ウォルシュ アンソニー 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (40617578)
長野 真澄 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (40633699)
小嶋 隆宏 (小嶋隆宏) 環太平洋大学, 次世代教育学部, 教授 (70727635)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大学留学生 / 学校支援ボランティア / 地域連携と地域貢献 / 継続性・持続性 / 活動の自律性と発展性 / 活動支援 / ジャーナルとポートフォリオ / 質問紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年までの実績を踏まえた3つの活動(Ⅰ.異文化交流, Ⅱ.外国籍児童の言語・学習補助, Ⅲ.中学校の英語授業のTA)研究を報告する。 Ⅰ.異文化交流:岡山市・赤磐市(小学校5校)全6回(平成28年単年)対象学年は3~6年生。児童数は9名~170名。留学生は3~30名。国籍はベトナム・中国・韓国・タイ・ニュージーランド・ウズベキスタン。日本語は日常生活に支障ないレベル。大学の授業として、または有志で参加。内容は双方の「文化や遊びの紹介」が主だが、赤磐市山陽小学校は「総合的学習の時間」として3回に分けて実施。概要は①地域の留学生への気づき(大学の教員が講和)。②留学生を招待し児童が考えた内容で実施後、国際理解のあり方について振り返り。③留学生の前で児童が調べ学習の内容を発表し、質疑応答。③の活動は公開授業となった。継続的・自律的活動へと移行する条件および段階付けを分析。 Ⅱ.言語・学習支援:岡山市・赤磐市(小学校3校)(平成28年度単年)前年からの継続と新規活動あり。外国籍児童2~6年生(6名)に個別に言語・学習支援。留学生4名(ベトナム・中国)。一定以上の日本語力・学習知識がある者を選抜。通常の学校支援ボランティアと同様の個別派遣。時間・コマ数により謝金と交通費を払った。期間・回数は約1~8ヵ月(21コマ~138コマ)。派遣留学生とは、共同研究者の長野が面接とジャーナルを使用して個別支援と指導を行い、後方支援活動のあり方を分析。 Ⅲ.英語授業へのTA活動:赤磐市(中学校1校)(平成28年度単年)赤磐市高揚中学校1年生約100名を対象に4名の留学生(ベトナム籍)が参加。英語力が高い学生を選抜し、講師のオチャンテ・カルロスとアンソニー・ウォルシュによる事前研修を受講の後、実施。英語を使い母国紹介やゲーム等の活動を少人数に分けて実施。留学生と中学生双方への事後アンケートを実施し、分析中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は当初3年で計画した研究期間の最終年であった。計画外であるが、当事業の活動の発展性を見極めるために3年間の活動期間は必要であったと考え、平成29年に1年間の延長期間をとり、当該研究の総括およびシステムモデルの提示を予定している。期間延長には主に以下の3点の理由がある。 まず「挑戦的萌芽研究」の名称通り、当研究は全くの試験的活動から始まった。地方大学の地域・教育への貢献を考え「留学生による学校支援ボランティア」を提案したが「留学生の地域貢献」とはどのようなものか、前例がないところで始めたため活動理解を広め、活動が軌道に乗るまでに一定時間(2年以上)を要した。 また、当事業の特性のひとつである「継続性・持続性」は、提唱・理解・活動・考察というサイクルを繰り返す形でシステム検証するほかない。地域教育機関・学校現場・派遣元の大学の連携が必要であり、まず「学校支援」の受益側である学校現場の実態に合わせ、実践に即した実践検証が肝要である。その関わりの中から得られる「信頼性」は徐々に育まれ、最終的に3年目の発展的活動へと結びついたため、事業の性格上、活動の遅れとはとらえ難い。十分な活動事例とデータ収集にかけた3年間は必要期間であったと考える。 しかしながら、これらのデータの取りまとめや分析に関しては、代表者自身を始め、当研究に関わる6名の研究者の健康・校務・家庭の問題に因るところが多く、最終年度末には代表者を含む3名が所属校を転出または退職した。このような危機事態に備え、各分野で担当者を2名ずつ配置していたことで活動の混乱は防げたが、研究期間の終了年に考察および研究の最終報告が形を成さなかったことは研究計画の再検証を要すると考えられる。当該事業の研究および持続的活動の条件にも関る懸案として、検証すべき内容と言える。最終的に4名の研究者が各活動の主担当として残留し研究活動に注力する。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間の活動により、多くのデータが得られている。「異文化交流」に関しては、1~2年目は留学生によるジャーナル、小学生からの礼状や感想・質問紙への回答を得ている。これらは支援享受側の児童・生徒の視点から検証できる。また、地域の教育委員会と学校関係者との関わりの変化も、インタビューを含め記録されている。 「言語・学習支援」に関しては、担当した留学生のジャーナルに対し、大学教員の支援・指導の様子と留学生の成長・変化が報告され、留学生教育や活動に関して再考察する。 「英語授業のTA活動」は、件数そのものが少ないことから、活動の提唱の仕方やそれ以外の中学校の実態における活動導入の難しさとこれからの展望が見込まれる。活動の効果と課題について質的に詳細を分析する予定である。 最後に、活動支援の中心となる大学側の課題は代表者が属する1大学のみのデータとなるため汎用性は現時点では乏しい。他大学への波及効果は将来に向けての期待に留まる。しかし、各部門に複数の担当者を置いたことを始め、事業継続における危機管理の面からは成果と考えられる報告が可能と思われる。支援の中心となる地方大学で起こりうる課題、その役割、活動の段階付けなど、システム構築の課題の一つとして分析・考察する。 当研究の代表者は延長期間および研究実績の取りまとめをもって他校へ転出したが、その際に、前任校で関係した教育委員会や小中学校から、当事業の活動継続と担当者引継ぎを強く要望され、円滑に活動の引継ぎがれたことを付記する。「挑戦的萌芽研究」としての芽は出ていると考える。こののちは、本研究で得られた事例やデータをもとにモデル化し、他の地方においても実現可能な事業として波及するか、継続的に検証したいと考えている。
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Causes of Carryover |
最終報告書(冊子)の出版と研究発表・論文投稿を計画していたが、代表者を始め、全共同研究者に健康・家族・本務内容等の変化があり、当研究の総括における物理的・精神的余裕を確保できなかった。また、活動内容も最終年に見られた成果もあり、それらの活動実績を反映させた最終報告書の作成は年内には困難であった。よって、事業活動経費のみ平成28年度は使用し、最終分析や報告における経費は延長期間に引き継いだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は過去3年間の活動の分析や総括に注力し、報告書の作成を第1の目標としている。残留した共同研究者も代表者を入れて4名であり、各部門を担当している。それぞれの部門において論文また報告書の作成を行う。そのための協議の旅費・研究会等への出張、論文投稿や報告冊子の出版費用にあてる予定である。
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