2014 Fiscal Year Research-status Report
大強度・高分解能パルス中性子による転位構造評価技術の開発
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26600146
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
STEFANUS Harjo 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (40391263)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 転位 / 金属 / 中性子 / 回折 / 鉄鋼 / 変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子線は高い物体への透過能を有するため、強度の高いパルス中性子源に設置した飛行時間法中性子回折装置(J-PARCのBL19)を用いれば、金属材料のバルク状態での変形及び機能発現機構の解明だけでなく、加工熱処理中等のその場測定ができるようになりつつある。しかし、ほとんどの場合飛行時間法の中性子回折実験では弾性ひずみや構造変化までしか情報を取り出して研究が行われており、材料強度に関係する弾性ひずみへもたらす転位構造に関する情報等は予測に過ぎなかった。本研究では、大強度・高分解能パルス中性子を利用して、飛行時間法での転位構造評価技術を開発し、様々な金属材料の変形機構および機能発現機構の解明と組織制御の理解に役立つ転位構造の評価に挑戦した。 平成26年度では、転位構造評価技術の調査、ソフトウェア及びJ-PARCのBL19の装置最適化を含めた準備、予備実験等を行い、転位構造評価技術の確立を行なった。その結果、J-PARCのBL19を転位構造解析のために最適化でき、転位構造評価解析手法を確立しただけでなく、応用としてナノベイナイト鋼の相変態と転位との関係を明らかにした。これらの成果をいくつかの国内外の会議にて発表し、論文及びプロシディングスを発表した。 平成27年度では、最適化した実験装置及び確立した手法を用いて様々な金属材料の変形中の転位構造変化を測定し、転位構造を取り入れた変形機構を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度では転位構造評価技術の調査を行い、プロファイル分離法としてVoigt法と古典Williamson-Hall法の組み合わせ、プロファイル畳み込み法としてConvolutional Multiple Whole Profile fitting(CMWP)法を絞って、検討した。プロファイル分離法を行うためのソフトウェアは市販のグラフソフト(OriginPro)の上でマクロ等を用いて試作した。また、CMWP法を行うためのソフトウェアは開発者であるハンガリーEotvos大学のTamas Ungar教授(本研究協力者)から直接教えてもらい、メール、テレビ会議及び国際会議の合間で直接指導を受けながらJ-PARCのBL19で得られたデータ解析ができるように調整を行った。 まず、転位構造評価ができるようにJ-PARCのBL19の調整を、標準試料LaB6 粉末や焼き鈍しした純鉄等を用いて行い、その後評価対象の鉄鋼材料を用いて予備実験を行い、2種類のプロファイル分離法およびCMWP法の適用とそれぞれの結果の妥当性確認を行なった。それらの方法の専門家(プロファイル分離法では研究協力者の茨城大学の佐藤成男先生)および開発者の指導を受けながら解析し比較検討した。また、他の共同研究者の協力を得て透過型電子顕微鏡(TEM)による転位密度評価も行なった。その結果、CMWP法が最も信頼性の高い手法であることを確認し、J-PARCのBL19で得られた中性子回折プロファイルを転位評価解析するには最適であることを確認することができた。 これらの結果を国内外の会議ですでに発表し、ナノベイナイト鋼のマルテンサイト変態によってオーステナイト相に導入された転位からベイナイト変態が促進されたことを見出し、共同研究者と一緒に論文発表まで行なうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に最適化した転位評価方法(CMWP法)および中性子実験装置であるJ-PARCのBL19を用いて、様々な金属材料の変形中の転位構造変化を測定し、転位構造を取り入れた変形機構を明らかにすることを目指す。今まで疑問として残っていた、引張試験において弾性限が低く高い引張強さを示すマルテンサイト鋼の変形機構の解明、及び中ひずみ量での低サイクル疲労中の転位構造の発達がもたらす破壊機構の解明を目指して応用実験として行なう。また、CMWP法の開発者と直接指導を受けながら、解析手法及び得られた結果の信頼性等を今後高める。
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Causes of Carryover |
プロファイル分離法による転位構造解析を支援するソフトウェアを製作する予定であったが、J-PARCのBL19での予備実験等では信頼性の高い結果が得られなかったため製作をキャンセルした。また、CMWP法をいろいろ試しながら動かせるためにすでにあったワークステーションを仮として使い、次年度に専用のワークステーション購入を行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
キャンセルしたソフトウェアの製作費分を実験用試料等の消耗品購入に使用し、CMWP専用のワークステーションの購入を計画している。
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