2015 Fiscal Year Research-status Report
地球軌道付近に存在する惑星間ダストの特徴と起源の解明
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26610178
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野口 高明 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40222195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロメテオロイド / ポリイミドフォーム / 高分解能X線トモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に行ったポリイミドフォームの高分解能X線トモグラフィ実験によってポリイミドフォームに捕獲された粒子の発見とポリイミドフォームに形成された穴の形状を把握する測定条件が明らかになった。この結果にもとづいて,実際に国際宇宙ステーションに搭載されていたポリイミドフォームを使って,ポリイミドフォーム中のトラック(粒子の衝突によって形成される穴)の大きさ・形状把握,捕獲粒子の探索を,カールツァイスマイクロスコピー株式会社にて行った。使用したポリイミドフォームは2005年に国際宇宙ステーションから持ち帰られたもののなかで,最も大きな穴が開いていたものである。 ポリイミドフォームに形成されていたトラックの形状はキャロット状であった。トラックは表面と約45°の角度をなして突入した粒子によって形成された。トラック長は約7mmであった。また,トラックの伸びている方向も決めることができた。過去の研究ではポリイミドフォームに高速衝突した粒子によってどのような形状のトラックが形成されるかは全く分かっていなかった。今回の研究によって,シリカエアロジェルのようにナノメートルオーダーで均質な物質とよく似た形状のトラックが形成されることが分かった。しかし,粒子の停止する先端付近ではトラックの形状はきれいなキャロット状からは崩れる。 捕獲粒子サイズは10ミクロンよりも小さく,捕獲過程で細かく粉砕されていることが分かった。このため,最大捕獲粒子の近傍でポリイミドフォームを極薄のナイフで切り出す計画であったのを変更し,トラックの延長線上に沿って極薄ナイフで2つに切り離すところまで行った。この切り出し作業はJAXAつくば宇宙センターのクリーンルームで,JAXAの木本博士と研究補助員の和気氏と共に行った。切り出したポリイミドフォームを九州大学に持ち帰り,光学顕微鏡観察を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では,2年目に捕獲粒子を取り出し,可能であれば分析するところまでおこなうことになっていた。しかし,実際に宇宙ステーションに搭載されていたポリイミドフォームに形成された最大の穴を使って研究したところ,長さが7mmにもなる巨大なトラックであったにもかかわらず,捕獲粒子は10ミクロン以下と非常に小さかった。シリカエアロジェルの場合,14mmのトラックには平均径30ミクロンを超えるマイクロメテオロイドが捕獲されていたことから考えて,直径20ミクロン以上のマイクロメテオロイドが捕獲されていると想像していた。しかし,10ミクロン以下のものしかX線では見いだせなかったため,すぐに捕獲粒子を取り出すのではなく,次年度に捕獲粒子をどのように取り出すか詳細な観察・分析を行って,最終年度に粒子を取り出して分析することに変更した。このように,捕獲粒子を取り出すところまで到達することはできなかったので,やや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2つに分割したトラック内壁の光学顕微鏡と低真空走査電子顕微鏡(LV-SEM)による詳細観察と捕獲微粒子の探索:実体光学顕微鏡で超深度画像を撮り,それら画像をあわせてトラック全体の光学顕微鏡造を作成し,再度,工業用顕微鏡を使って詳細に観察を行い,捕獲粒子を発見する。このデータにもとづいて,トラック内壁を試料を蒸着せずに観察できるLV-SEMで観察し,捕獲粒子の表面形状,大きさを把握。さらに,エネルギー分散型分光器(EDS)を使って,捕獲粒子の化学組成を測定し,捕獲粒子が天然物科人工物かを明らかにする。 (2)顕微ラマン分光器を使った物質の同定:上記の2つの実験によって同定した捕獲微粒子のラマン分光分析を行い,さらに詳細な資料の同定を行う。 (3)顕微マニピュレーションによる捕獲粒子の取り出しと著博切片作成:位置・大きさを把握した捕獲微粒子を,工業用顕微鏡に取り付けたマイクロマニピュレーターをつかって取り出す。試料は速やかにエポキシ樹脂包埋し,ウルトラミクロトームを使って捕獲粒子の超薄切片を作成する。 (4)捕獲微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察と分析:超薄切片を九州大学超顕微鏡解析研究センターのTEMを使って行う。その結果を微小地球外物質と比較する。 (5)次に大きなトラックについて,カールツァイスマイクロスコピー株式会社にて分解能X線トモグラフィ実験を行う
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