2015 Fiscal Year Research-status Report
シノワズリの逆輸入と地域アイデンティティ-中国上海・広州の水を活かした空間計画-
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26630278
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
栗原 伸治 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (60318384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎尾 直子 東京工業大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80282862)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 上海 / 外灘 / 旧フランス租界 / 雑貨 / 形容詞 / 香港 / マカオ / 広州 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、17c半ばから18cにかけてヨーロッパで大流行し、近年の中国においても目にすることの多い「中国的」様式、シノワズリへの嗜好に着目して、そのデザインと地域アイデンティティとの相互関係について考察する。そのために、平成26年度は、ヨーロッパの文献もふまえた日本のシノワズリに関する文献から、シノワズリの学術的な概念とその構成要素のつながりについて分析した。また、上海での現地調査により、地域文脈にもとづくシノワズリの文化的要素について整理した。平成27度は、これらの成果をもとに、現在の中国でみられる「シノワズリ的」なるものを明らかにすることを目標に、以下の2つの研究実施計画をたてていた。 ・文献調査と現地調査をおこない、「シノワズリ的」なるものの要素の定義づけを試みる。 ・その要素に対するイメージ調査を日本と中国の人びとを対象におこない、そのイメージ調査の結果をもとにした空間構成や空間表象・空間認識に関する実験を、画像等をもちいつつおこなう。 これらの研究計画の実施により、平成27年度は以下のような成果が得られた。 1.日本で刊行されている観光ガイドブックを対象とした文献調査を平成26年度と同様の方法によっておこない、現在の中国でみられる「創出された」シノワズリの概念・認識、つまり「シノワズリ的」なるものの概念・認識について具体的に把握した。また、それらと平成26年度に把握した「本来の」学術的な意味でのシノワズリの概念・認識との比較考察もおこなった。 2.中国広州、香港・マカオにおける現地調査から、「シノワズリ的」なるものの要素の現況を現地にて確認し、それらに対するイメージの一端をインタヴュー調査により把握した。しかしながら、上記1の内容については、想定していた以上に詳細に考察したため、当初予定していた画像等をもちいた実験等は実施しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で書いたように、「シノワズリ的」なるものの要素の定義づけに関する分析は予定どおりにおこなうことができた。また、中国広州での現地調査を予定どおりに実施し、さらに香港・マカオでも現地調査を実施した。そして、「シノワズリ的」なるものの要素の現況を現地にて確認するとともに、それらに対するイメージの一端をインタヴュー調査により把握した。そのいっぽうで、予定していた画像等をもちいたイメージ実験は実施できなかった。しかしながら、「シノワズリ的」なるものの要素については、日本で刊行されている観光ガイドブックをもちいて、その概念・認識について想定していた以上に緻密に把握することができた。また、平成26年度に把握した「本来の」学術的な意味でのシノワズリの概念・認識との比較考察もおこなうこともできた。 以上の理由から、現在までの達成度は、総合的には「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の分析から明らかにした「本来の」学術的な意味でのシノワズリの概念・認識、および平成27年度の観光ガイドブックをもちいて分析した「創出された」シノワズリの概念・認識、つまり「シノワズリ的」なるものの概念・認識は、いずれも発信側がもつイメージに対してのものである。いっぽう、これらに対する受信側のイメージもある。両者はかならずしも一致するものではなく、おたがいに影響を与え、かつ影響を受けつつ、再生産されてゆくことが予想できる。そして、「シノワズリ的」なものや、水を活かした空間計画で具現化された空間・景観は、それらの再生産によって創出されてゆくものとも考えられる。 以上のことをふまえて、平成28年度は平成27年度までの考察をもとにして、まずは時間軸と空間軸を超えた二重の意味で逆輸入されたシノワズリと、もの・空間・景観との相互作用のメカニズムに関して整理をおこなう。そのうえで、現地調査をとおして、事例地における「シノワズリ的」なもの・空間・景観に関する沿革、現況、今後の方向性と、それらと地域アイデンティティの関係について考察してゆく。このとき、伝統文化の創出にもとづく地域空間計画の可能性と限界、日本での応用の可能性についても視野に入れる。同時に、今後の基盤研究への申請にむけた研究計画をたて、共同研究班を組織するための準備もおこなってゆく。
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Research Products
(11 results)