2014 Fiscal Year Research-status Report
溶融燃料の粘性および表面張力評価への光散乱法の適用
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26630486
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有馬 立身 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60264090)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レーザー / 光散乱 / 表面張力 / 粘性係数 / 二光束干渉法 / 核燃料 |
Outline of Annual Research Achievements |
核燃料の超高温物性、特に高温液体の物性は測定が困難であり、過去の研究例も極めて少ない。しかしながら、福島第一原子力発電所事故の事象進展の解析をはじめ、原子炉の安全解析においては、溶融燃料の物性は必要不可欠なものである。そこで本研究では、液体物性の中でも表面張力・粘性係数に着目し、それらの測定手法の開発を目的とした。ここで提案する測定手法は、液体の表面に局在する波(リプロン)を回折格子と見なし、そこへレーザー光を照射し、リプロンから散乱されてくる一次回折光の強度の時間変化を解析することで、これらの動的物性を評価するものである。当初は自然発生的に存在するリプロンに対して測定することを予定していたが、粘性が低いものには有効であるが、測定時間を要する(繰り返し測定が必要)、外部からの振動を最大限抑える必要があることなどが判明した。本研究で測定対象となる溶融燃料などの粘性が高い液体は自然な状態ではリプロンが生じにくいため、二光束レーザー干渉法により外部から強制的にリプロンを生じさせる手法を採用することとした。この手法は測定システム自体は複雑になるものの、一方で測定時間がμsオーダーになることが期待できる。 初年度は主に光散乱装置の設計・製作を実施した。具体的には、リプロンの挙動を反映した信号としての回折光を得るための可視レーザーおよびノイズ除去用空間フィルター、リプロンを強制的に発生させるための二光束干渉法用レーザーおよび光強度調製用アッテネータ、各種ミラー、ビームスプリッター、回折光検出器等を適切な位置に光学テーブル上に配置することにより、光散乱装置を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光散乱測定装置の設計・製作を以下の通り行った。 (1)プローブ光として高強度He-Ne(波長633 nm)を選択し、レーザー光の空間ノイズ除去用スペイシャルフィルタとして、入射(対物)レンズ-ピンホール-出射レンズから構成される装置を製作した。スペイシャルフィルタは、空間ノイズ除去性能を有するだけではなく、レーザー光の液体表面上でのスポット径が可能な限り小さくなるように、また発散が小さくなるように、ピンホール径およびレンズ焦点距離等を考慮し、設計した。 (2)当初、液体表面に発生する波(リプロン)を自然発生的に存在するものとして測定することを予定していたが、高粘性液体では外部から強制的に発生さる方が有利なことから、リプロン発生機構にとして二光束干渉法装置を準備した。具体的には、短パルス(ナノ秒)YAGレーザーから発せられる光をビームスプリッタで分け、再び液体表面上で重ね合わせ干渉縞を発生させる。その結果、この干渉縞に応じた温度分布が瞬時に液体表面に生じ、リプロンが発生する。更に、干渉縞の大きさ、すなわちリプロンの波長を正確に把握するために、アッテネータをYAGレーザーの前面に配置することによりレーザー光の強度を調節可能とし、液体表面に発生する干渉縞観察用として空間分解能に優れたCCDタイプのビームプロファイラを光路上に配置できるようにした。 (3)He-Neレーザー光が液体表面で散乱される際に発生する一次回折光を検出するために、アバランシェフォトダイオードを光路上に配置した。また、フォトダイオードには信号解析用として高速デジタルオシロスコープを接続した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)試料としてグリセリン‐水系液体を測定する。グリセリンの粘度は約1000 mPa・s、水は0.89 mPa・sであり、その割合を変えることで粘度調整が可能となる。その結果、これまで報告されているUO2の粘度最大約8 mPa・sを十分にカバーできる。 (2)光散乱装置の組み上げ・調整を引き続き実施する。低粘性液体の場合、自然状態でもリプロンは存在するが、粘性が高くなると減衰効果が大きくなり発生しにくくなる。これは光散乱法での測定が困難になることを意味する。そこで、自然状態での測定から、液体表面に強制的にリプロンを生じさせるための二光束レーザー干渉機構の導入へと計画を変更した。ここではUO2融体の測定を想定し、短パルスYAGレーザーを導入した。リプロンの発生原理は、液体表面での干渉現象を利用し、空間的に周期的な温度分布を液体表面に発生させ、熱膨張作用により凹凸を発生させるというものである。液体の表面張力・粘性測定は、パルス照射が終了したと同時に、凹凸が元に戻る際のリプロンの挙動を測定することで実現できる。ここで重要なのはリプロンの波長の決定であり、ビーププロファイラを使った干渉縞の短時間での精密測定を実施する。また代替案として、黒アクリルプレート上に干渉縞から回折格子を作製し、回折格子の格子間隔の観察・測定、およびそれを使った回折実験も行う。 液体表面での散乱強度は、プローブ光(He-Neレーザー)の偏光状態に依存することから、半波長板の導入を実験的に検討する。 (3)試料の加熱溶解機構を検討する。本研究の最終目的はアクチニド酸化物融体の物性測定であることから、試料の非接触加熱機構として、赤外線加熱(ハロゲンランプ等)およびレーザー加熱(半導体レーザーまたは炭酸ガスレーザー)を検討する。
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