2015 Fiscal Year Research-status Report
血液一滴の可能性を拓く -血漿プロテオミクスで脳のストレス関連障害を語る-
Project/Area Number |
26640115
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小寺 義男 北里大学, 理学部, 准教授 (60265733)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 隆之 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (00172487)
板倉 誠 北里大学, 医学部, 准教授 (30398581)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 血液 / プロテオミクス / 血漿 / 安定同位体標識 / 不安様行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
血清・血漿中のタンパク質分析は組織、臓器に比べて非常に難しく、満足な分析が出来ているとは言い難い。また、ヒトの組織、特に健常者の組織を直接調べることは困難である。 本研究は、3種類のストレス関連障害マウス(①不安障害を示すピロカルピン投与マウス、②ストレス障害を示す変異マウス、③うつ様症状を示す慢性ストレス負荷マウス)を対象に、ストレス関連障害と脳内変動に相関する血漿タンパク質の変動を徹底的に分析する。これによって、マーカーという概念にとらわれず、血漿プロテオームの持つ新たな可能性と観点を見出すことを目的とした研究である。そこで、平成27年度は平成27年度に引き続き主に以下の3点を進めた。 (1)血漿中の高濃度タンパク質3しゅるを除去するカラムと独自に開発した血漿タンパク質分画法(3分画に分画)を組み合わせた血漿タンパク質の前処理法を確立した。また、この方法で分画した血漿タンパク質をトリプシン消化して、安定同位体標識試薬の一種である Isobaric Tag を標識して6種類の試料を高精度に比較分析する方法を確立した。この方法を①のモデルマウス血漿に応用し、行動変化に相関する複数のタンパク質の探索に成功した。また、③のマウスに対しても同様の方法を開始した。 (2)モデルマウス脳組織中のタンパク質の変動解析: ①のマウスの海馬について、可溶性タンパク質分画と難溶性タンパク質分画をそれぞれトリプシン消化してIsobaric Tag標識後にイオン交換カラムで再分画しLC-MS分析を行った。その結果、神経関連タンパク、ミエリン関連タンパク質を含む約3500タンパク質に対して高精度な比較分析に成功した。この結果をもとに不安様行動と相関するタンパク質の同定に成功した。また、③のマウスの視床下部についても実験を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載の通り、交付申請書に記載の平成27年度の研究事項はほぼ達成できた。血漿分析におけるポイントは、比較分析の精度であった。この点では、高濃度タンパク質除去法(市販のカラムを使用)と独自に開発した血漿タンパク質分画法を組み合わせた前処理方法に、比較分析用の安定同位体標識法を取り入れて高精度な比較分析法を確立することを目指した。様々な条件検討の結果、相対的標準偏差(CV%)10%程度の高い精度が実現でき、多変量解析を用いた不安様行動と相関するタンパク質の解析が可能となった。次に、マウスの脳組織については、膜成分を含む神経関連タンパク質、ミエリン関連タンパク質をどの程度分析できるかがポイントであった。この点に関しては、トリプシン活性を阻害せず、酵素消化後の可溶化剤を効率よく除去できる膜タンパク質の可溶化法(相関移動溶解法)を取り入れることによって膜タンパク質を含むトータルプロテオーム解析が可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)血漿タンパク質の詳細な比較分析:①のマウスについては既にタンパク成分の高精度な比較分析を実現できた。そこで、今後は③のマウスについて高精度比較分析を行う。これにより、①および③のマウスにおける行動と相関するタンパク質ならびに①、③において相関するタンパク質を抽出し、2種類の不安様行動に伴う血漿タンパク質変動を体系的に解析する。 (2) 脳内タンパク質の変動解析:①と③のマウスにおいて、脳組織のプロテオーム解析を行い、それぞれについてネットワーク解析を行う。これにより、2種類の不安様行動と相関するタンパク質変動を捉える。また、脳内タンパク質の変動、不安様行動、血漿タンパク質の変動の相関解析を行い、血漿タンパク質の変動から脳内のタンパク質の変動を推測するためのマーカータンパク質の探索を目指す。
|
-
[Journal Article] Autoantibodies against vinculin in patients with chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy.2015
Author(s)
Beppu M, Sawai S, Satoh M, Mori M, Kazami T, Misawa S, Shibuya K, Ishibashi M, Sogawa K, Kado S, Kodera Y, Nomura F, Kuwabara S.
-
Journal Title
J Neuroimmunol
Volume: 286
Pages: 9-15
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-