2014 Fiscal Year Research-status Report
内因性代謝物質による脱アセチル化酵素サーチュイン活性制御機構の解明
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26650011
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 昭博 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (40391859)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サーチュイン / 代謝物質 / アセチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
内因性の代謝物質でドーパミンとパルミチン酸のアミドであるN-Palmitoyl Dopamin (PALDA)およびその類縁物質がSIRT2の内因性阻害物質であることを明らかにすることを目的とし、平成26年度は以下の4点について研究を推進した。 1. 細胞レベルでのPALDAのSIRT2阻害活性の検討。独自に取得したSIRT2の生理的基質であるコータクチンのアセチル化を特異的に認識する抗体を用いたウエスタンブロット法により、PLADAが細胞内SIRT2活性を阻害することを示した。 2. PALDA定量法の確立。PALDAを定量的に測定するために、まず標品を用いて質量分析法によりPALDAを検出できることを確認した。次に生体サンプルからの定量を可能とするために、帝京大学との共同研究として安定同位体を含有するPALDAを合成した。 3. PALDAとSIRT2の共結晶構造解析。PALDAとSIRT2複合体構造を明らかにし、PALDAによるSIRT2阻害の分子機構の一端を示した。加えて、パルミチン化およびミリストイル化リジン含有ペプチドとSIRT2の複合体構造も明らかにし、PALDAとSIRT2複合体構造と比較検討した。 4. PALDA類似物質のSIRT2阻害活性の検討。PALDA以外のアシルドーパミンのSIRT2阻害活性の有無を調べる目的で、市販可能な4種類のアシルドーパミン(N-Lauroyldopamine、N-Stearoyl dopamine、N-oleoyl dopamine、N-arachidonoyl dopamine)のSIRT2阻害活性を検討し、in vitroでSIRT2阻害活性を有するアシルドーパミンの種類を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ドーパミンとパルミチン酸のアミドであるN-Palmitoyl Dopamine (PALDA)あるいはその類縁物質がSIRT2の内因性阻害物質であることを明らかにすることである。そのため平成26年度は、PALDAによる細胞内SIRT2阻害の確認、PALDA定量法の確立、PALDAとSIRT2の共結晶構造の解明、SIRT2阻害活性を有するPALDA類似物質の同定を目的に研究を行った。PALDAによる細胞内におけるSIRT2阻害活性については、SIRT2の生理的基質であるコータクチンのアセチル化を指標にして、PALDAは細胞内でSIRT2の活性を阻害できることを確認した。PALDA定量法の確立については、安定同位体含有PALDAの合成など、質量分析法を用いてPALDA定量するための準備を整えた。PALDAとSIRT2の共結晶構造解析については、PALDAとSIRT2の共結晶を取得し複合体の構造を明らかにすることに成功した。さらに、ミリストイル化およびパルミチン化リジン含有ペプチドとの複合体の構造も明らかにし、PALDAによるSIRT2 阻害機構、とくにその脂肪酸部分の重要性について知見を得た。PALDA類似物質のSIRT2阻害活性については、市販可能な4種類のアシルドーパミンを用いて、PALDA以外にも複数のアシルドーパミンはSIRT2阻害活性を有することを見出した。以上から、当初予定していた目標については、概ね達成することが出来たと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
PALDAおよびその類縁物質がSIRT2の内因性阻害物質であることを明らかにすることを目的とし、引き続き以下の研究を推進する。 1. In vitroおよびin vivoにおけるPALDAおよびその類縁物質によるSIRT2活性制御。PALDAおよびその類縁物質による細胞内の選択性を明らかにする目的で、SIRT1の基質であるp53のアセチル化レベルを検証する。我々は、SIRT2は細胞の運動性を亢進させることを見出している。さらに、DNA複製ストレスやゲノムDNAの安定性に関与していることが知られている。そこで、PALDAおよびその類縁体によるSIRT2阻害が細胞の運動性、DNAダメージ応答やDNA複製ストレス応答に影響を与えるかどうか、既存のSIRT2阻害剤およびsiRNAを用いたSIRT2ノックダウン効果と比較しながら検討する。加えてマウスを用いて、SIRT2の基質であるコータクチンのアセチル化等を指標にして生体内のSIRT2の活性化とPALDAの量を比較検討することにより、PALDAがSIRT2の内因性阻害物質であることを確認する。 2.PALDA定量法の確立。前年度合成した安定同位体含有アシルドーパミンを用いて、細胞あるいはラット/マウス各組織からのPALDA定量法を確立し、生体内のアシルドーパミン量を測定する。 3.PALDAおよびその類縁物質によるSIRT2阻害分子機構 PALDA以外のSIRT2阻害活性を有するPALDA類縁体とSIRT2の共結晶構造解析を行い、さらに速度論的解析等を実施することにより、SIRT2阻害分子機構を解明する。
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Causes of Carryover |
本研究課題の目的を達成するためにアシルドーパミンの定量法を確立することが重要である。平成26年度において質量分析法による標品の検出、安定同位体含有のアシルドーパミンの合成など、定量法の確立に必要な準備は整えたが、マウスを用いた定量には到らなかった。そのため、マウス購入費分として考えていた経費の一部が、次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金と合わせた直接経費1,357,367円のうち、物品費に1,142,633円、旅費に100,000円、その他に100,000円を使用予定。内訳および使途目的は以下の通り。物品費(1,142,633円):抗体類(200,000円)、細胞培養関連器材(20,000円)、ガラス器具(100,000円)、マウス(100,000円)その他一般試薬(542,633円)。旅費(100,000円):本課題の成果を国内学会に発表。その他(100,000円):学会参加費、論文投稿料等。
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Research Products
(2 results)