2014 Fiscal Year Research-status Report
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26650109
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
坂井 貴文 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40235114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80610831)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 下垂体隆起部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、下垂体隆起部から分泌される因子が脳脊髄液を介して脳内に作用するという仮説を検証することを目的として実験を行った。ラットの第四脳室に翼状針を刺し、シリンジを用いて5 %西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を投与した。投与10分、30分、60分後に脳をサンプリングし、凍結切片を作成した。その後、ジアミノベンジジン(DAB)と過酸化水素によってHRPの可視化を行った。第四脳室へのHRP投与の結果、HRPシグナルは隆起部のlobule構造を形成するTSH細胞を取り囲むように存在し、細胞間に弱いシグナルが観察された。クモ膜下腔と脳底側方にもHRPシグナルが見られ、脳底側方ではHRP投与時間の経過と共に実質内への拡散が認められた。次に、隆起部の構造をより詳細に観察するために、基底膜の主な構成要素であるラミニンを、抗ラミニン抗体とABCを用いた免疫組織化学的手法で染色し、光学顕微鏡下による観察を行った。その結果、隆起部におけるラミニン免疫陽性反応はlobule構造を形成するTSH細胞を取り囲むように局在していた。以上の結果は、脳室内のHRPは基底膜に沿って移動し、lobule構造内に到達したことを示唆しており、このことから隆起部細胞から分泌された因子はクモ膜下腔の脳脊髄液中に放出されることを示唆している。さらに、脳脊髄液中に放出された因子は、脳底側方に浸透し、実質内に作用する可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は下垂体隆起部から分泌される因子の作用経路を明らかにすることを目的に検討を行った。HRP投与実験により、下垂体隆起部から分泌される因子が脳脊髄液を介して脳内に作用するという研究仮説が正しいことが示唆された。実際に隆起部で産生されていることが確認されているTSH、ニューロメジン(NMU)そしてIGFBP5などの因子を脳脊髄液中での濃度を測定することが必要であるが、現在すでに実験に着手しており、多少の遅れはあるものの、概ね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は昨年度に引き続き脳脊髄液中でのTSH、NMU、IGFBP5の濃度を測定する。また、脳脊髄液中でのそれらの因子に日内変動があるかを検討し、隆起部でのそれらの遺伝子発現と比較する。さらに、メラトニン投与や松果体除去手術による脳脊髄液中のTSH、NMU及びIGFBP5濃度の変動を調べる。加えて、隆起部から脳脊髄液中に分泌される新規因子を同定する実験を行う。下垂体隆起部で発現する遺伝子をマイクロアレイで網羅的に解析し、脳脊髄液中のタンパク質及びペプチドは飛行時間型質量分析法(MALDI/TOFMAS)を用いて検出し、それぞれのデータを照合することによって新規因子を探索する。
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Causes of Carryover |
データを得るための実験回数が想定していたよりも少ない回数で十分であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生理実験及び分子生物学的実験に使用する物品と使用する。
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Research Products
(3 results)