2014 Fiscal Year Research-status Report
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26650163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北島 薫 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40721379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 兼弘 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20324684)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熱帯林樹種 / 生葉のケイ素濃度 / リターのケイ素濃度 / 森林生態系 / 物質循環 / 東南アジア / キナバル山 / 土壌ケイ素可給性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の活動としては、まず、2014年6月に日本熱帯生態学会において、当研究課題を紹介した。また、7月までには実験室整備を完了し、植物葉の粉砕とケイ素濃度の定量化を効率よく行えるようになった。また、1年目の主要な研究活動として予定されていたボルネオ島キナバル山での研究については、研究分担者の北山兼弘教授との現地調査を行い、実験室におけるリターと生葉のケイ素濃度の定量化は予定通り進行している。キナバル山の海抜高度が異なるサイトで集められたリターのケイ素濃度を比較した結果、高度700mのサイトと比べ、高度1700m、2700m、3100mの森林では葉リターに含まれるケイ素濃度が大幅に低いという興味深い結果が得られた。これに対して、 ケイ素可給性が異なると予測される蛇紋岩と 堆積岩という2つの母岩タイプではリターのケイ素濃度に違いが見られなかった。これらの結果は森林群集のリターのケイ素濃度は土壌のケイ素可給性よりも樹種組成の違いを反映していると考えられ、この予測を検証するため、 生葉のケイ素濃度の土壌ケイ素可給性の分析を現在進行中である。さらに、研究地としては新たにマレーシア半島のパソ研究林を加え、生葉、リター、土壌のケイ素可給性を定量した。この研究は、学部4回生の石澤秀紘氏が卒業研究課題としておこなったもので、植物を介してのケイ素循環が土壌のケイ素可給性や樹種の空間分布にどのように影響するか、という新たな課題にチャレンジできた。この結果は、2015年3月の日本生態学会においてポスターとして発表され、現在、投稿論文を準備中である。まとめると、「熱帯樹種はケイ素蓄積を能動的行う種からケイ素を排他的に貯めない種まで大きな違いが有る」、という当研究の主要な仮説の一つは検証でき、さらに、海抜高度や母岩の影響についても、新たな知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は土壌のケイ素供給度と葉やリターのケイ酸濃度を定量比較して、熱帯林生態系での植物を介したケイ素循環の研究を開拓する、という大きな目的をもつ。 植物種の多様性の非常に高いボルネオ島において土壌風化度が異なる複数のサイトを選ぶという計画で申請し、この当初の計画は 順調に進行している。さらに、半島マレーシアのサイトも加えたため、初年度においては予定どおり、または,それ以上の成果達成ができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究課題の推進方向としては、(1)ボルネオ島サバ州、キナバル山サイトでの生葉と土壌のサンプルの実験室での分析を終え統計解析をまとめる、(2)半島マレーシアのパソ研究林サイトでの結果を査読付き国際紙に発表する、(3)ボルネオ島サラワク州ランビル国立公園での生葉と土壌の現地調査を行う、(4)これまでの結果を論文としてまとめ、今後の研究推進方向を定め、平成28年以降5年間の研究課題と計画を定める、という4点である。ランビル国立公園での調査については、平成27年度の前期に、同サイトでの研究経験のある共同研究予定者と相談して、調査許可などを得る必要があり、これによっては細かい研究計画が変更する可能性がある。
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Causes of Carryover |
初年度(平成26年度)の実験計画うち、人件費・謝金で予定していた活動の一部を学生の課題研究として遂行したため、 経費の節約ができた。一方、申請書に予定していなかった調査地も追加したこと、又、当初予定していなかった国内学会で研究報告をしたことから、旅費が増額した。これらの調整の結果、残額が発生したが、実験室での分析予定のサンプルの総数が増えること、また、課題研究に参加する学生が2名になること、から、平成27年度の必要経費は、当初の配分額より大きくなると予想される。よって、初年度予算の残額を次年度に使用することを希望する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
課題研究に参加する学生が1名から2名に増えるため必要な旅費にあてる。
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Research Products
(3 results)