2015 Fiscal Year Annual Research Report
多様な環境下で生成した土壌の細孔分布とそのリンおよび炭素の環境動態への影響
Project/Area Number |
26660048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 哲弘 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (60456902)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 土壌生成 / 土壌有機物 / リン酸 / 火山灰 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中でリン酸や有機物はAl・Fe酸化物と結合して存在しているが、Al・Fe酸化物の形状、すなわち細孔分布により、リン酸の可動性や有機物の分解性が異なる可能性がある。本研究は、気候や母材などの生成条件が異なる土壌を対象として、その細孔分布と、細孔分布がリン酸の可動性や有機物の分解性にあたえる影響を明らかにし、「細孔分布」という新しい着眼点で、リン酸と有機物の動態を明らかにすることを目的として行った。 平成27年度は、インドネシアの火山帯と非火山帯の土壌における有機物含量と細孔分布の関係を調べた。また、有機物を含まない純粋なAl・Fe酸化物の細孔分布を調べた。同一地点では、有機物含量の高い表層の土壌で比表面積が小さく、含量の低い下層の土壌で比表面積が大きかった。細孔は純鉱物とAl・Fe酸化物量の多い高標高帯の土壌に見られるが、より風化が進みAl・Fe酸化物量の少ない低標高帯の土壌には存在しなかった。以上より、土壌有機物が蓄積するにつれ比表面積が減少すること、有機物は細孔に優先的に吸着しそれを塞ぐことが明らかになった。 また、細孔分布の異なる土壌について、添加後のリン酸の抽出されやすさを調べた。4 nm以下の細孔を持つ土壌では、リン酸の抽出速度は小さかった。この4 nm以下の細孔を持つ土壌は、Al・Fe酸化物量の多い気温が低い温帯と熱帯の高標高帯の土壌および火山灰を母材とする土壌であり、一方細孔を持たない土壌はAl・Fe酸化物量の少ない熱帯の低標高帯の土壌と温帯の土壌であった。 これらの知見は、自然生態系および農業生態系において、土壌の細孔分布が有機物の蓄積やリン酸の可動性に影響を与えていること、また有機物とリン酸が細孔への吸着を競合することを示しており、これらの環境中での動態予測を精緻化することに寄与する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 風化指標とケイ酸活動度に基づいた土壌粘土鉱物の風化経路2015
Author(s)
渡邉哲弘, 太田頼子, 長谷中洋輔, 浦山慧美, 上田史織, Hartono Arief, Mvond Ze Antonie, Kilasara Method, 小崎隆, 舟川晋也
Organizer
日本土壌肥料学会
Place of Presentation
京都大学(京都府・京都市)
Year and Date
2015-09-09 – 2015-09-11
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