2014 Fiscal Year Research-status Report
細菌の超低栄養好気的条件下での生育に機能する基礎代謝経路の全貌解明
Project/Area Number |
26660054
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永田 裕二 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (30237531)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 嘉行 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (40342761)
津田 雅孝 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90172022)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 炭酸固定 / oligotroph / スフィンゴモナッド / グリオキシル酸回路 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
地球表層環境に広く棲息する好気性従属栄養環境細菌群は、超低栄養な環境下でも細胞を増殖させる機構を有していると考えられる。我々は環境汚染物質分解能を有する典型的な好気性従属栄養環境細菌株が、アルコールデヒドロゲナーゼホモログ遺伝子 (adhX) を高発現させると有機炭素源非添加無機培地でCO2固定しながら生育する現象を見出し、その際、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ (PPC) によるCO2固定を伴うグリオキシル酸経路が同化過程として機能していることを強く示唆する結果を得た。他の研究からも環境細菌が低栄養環境下で生育する際に同様の経路が機能している可能性が示唆されている。本研究では、本経路の全貌を解明すると共に、その普遍性を明示し、有用細菌の超低栄養条件下での培養への可能性を検討することを目的として研究を行い、本年度は以下の成果を得た。1.推定PPC遺伝子とリンゴ酸シンテース遺伝子の遺伝子破壊株を作製し、検討した結果、これら遺伝子は本表現型には必須ではないことが明らかになった。2.adhX産物およびその変異酵素を大腸菌で高発現・精製する系を確立した。さらに、adhX産物はNAD+依存的アルコールデヒドロゲナーゼ (ADH) 活性を有することを明示した。3.adhX遺伝子完全欠失株を作製し、本株でadhX遺伝子および変異型遺伝子を高発現させたところ、本表現型とADH活性に相関関係があることが明らかになった。4.本表現型に関与する遺伝子を網羅的に同定するために、古典遺伝学的なトランスポゾン挿入突然変異株取得法と次世代シーケンサーを組み合わせた新規手法の開発を進めた。5.UT26株由来のadhX遺伝子を他株で高発現させたところ、複数の株が同様の表現型を示し、本表現型の普遍性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本表現型への関与が示唆された2つの遺伝子が本表現型には必須ではないことを示す結果が得られた点は本表現型の全貌の解明にとってマイナス要因であるが、当初、本表現型とは無関係と考えられていたadhX産物のADH活性が本表現型と相関関係にあることが示せた点は重要な成果である。また、次世代シーケンサーを用いて関与遺伝子を網羅的に解析する系がほぼ確立できたため、来年度内の目的達成が期待できる。さらに、本表現型がUT26株のみならず、類縁関係が比較的遠い他株でも観察されたことは、本表現型の普遍性を示唆する重要な成果である。以上、多少のマイナス要因はあるものの、いくつかの重要な成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を実施し、本表現型の機構を解明すると共に、その普遍性を明示し、有用細菌の超低栄養条件下での培養への可能性を検討する。 1.次世代シーケンサーを用いた関連遺伝子の網羅的同定:古典遺伝学的なトランスポゾン挿入突然変異株取得法と次世代シーケンサーを組み合わせた新規手法がほぼ確立できたので、本手法を用いて本表現型に関与する遺伝子を網羅的に同定する。 2.推定関連遺伝子の機能解析:前年度までにadhX産物の精製系を確立し、ADH活性が本表現型に直接関与することを示した。本年度は、adhX産物の基質特異性などについてより詳細に解析を行う。また、adhX産物はホルムアルデヒドジスムターゼ (FDM) 活性を有することも示唆されるため、その可能性を検証し、本表現型との相関関係を明らかにする。さらに、本表現型への関与が明らかになった他の遺伝子産物の機能解析も実施する。 3.他細菌株での本代謝経路関連遺伝子の機能解析:前年度までに、UT26株由来のadhX遺伝子の高発現により、同様の表現型を示す他環境細菌株を複数見出した。本年度は、他環境細菌株由来のadhXホモログが当該表現型に関与するかについても検討する。さらに、低栄養条件下で生育する天然の株でも同様の代謝経路が機能しているか検討する。
|
Research Products
(29 results)
-
-
-
[Journal Article] Structural and Functional Analysis of Novel Haloalkane Dehalogenase with Two Halide-Binding Sites2014
Author(s)
Chaloupkova R, Prudnikova T, Rezacova P, Prokop Z, Koudelakova T, Daniel L, Brezovsky J, Ikeda-Ohtsubo W, Sato Y, Kuty M, Nagata Y, Smatanova IK, Damborsky J
-
Journal Title
Acta Crystallographica Section D
Volume: D70
Pages: 1884-1897
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-