2014 Fiscal Year Research-status Report
森林土壌からの温室効果ガス排出量を制御する植物起源揮発性有機物の探索と影響評価
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26660136
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
森下 智陽 独立行政法人森林総合研究所, 四国支所, 主任研究員 (90391185)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 森林土壌 / ブナ / カラマツ / モノテルペン / 二酸化炭素 / メタン / 一酸化二窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林土壌中におけるモノテルペンの分布パターンおよび季節変化を森林植生と関連付けて明らかにするために、岩手県八幡平市の安比高原の気象観測試験地において土壌中のモノテルペン濃度の観測を開始した。気象観測タワーのあるブナ林および隣接するカラマツ林を対象試験地として、8月および11月に観測をおこなった。モノテルペン分析試料は、それぞれの林分の林内大気、A0層とA層の境界およびA層から吸着剤を充てんしたステンレスパイプに採取した。ブナ林については、気象観測タワーにのぼり、林冠上および林冠内の大気の採取もおこなった。採取した試料は森林総研つくばのFIDガスクロマトグラフィで分析してモノテルペンの同定および濃度測定をおこなった。分析した土壌空気サンプルからは、主に、αピネン、カンフェン、βピネンが検出されたが、林内および林冠上大気については、これらモノテルペンはいずれも検出限界以下であった。検出されたモノテルペン濃度について、どの物質も、ブナ林土壌よりもカラマツ林土壌で数倍高かった。また、土壌中モノテルペン濃度は、季節変化を示し、11月よりも8月のサンプルで数倍高い濃度を示した。両林分については、気象、地形、土壌、下層植生に大きな違いはないため、この土壌中モノテルペンの濃度の違いは、ブナおよびカラマツによるモノテルペンの生成の違いが原因となっている可能性が示唆された。ブナやカラマツの落葉あるいは根が生成因子として考えられるが、特定には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度については、さまざまな植生の林分において土壌中のモノテルペンの種類および濃度、その季節変化を明らかにすることが目的だったが、ブナおよびカラマツで観測をおこない、さらに複数の時期で観測して、生成するモノテルペンについて樹種による違い、および季節変化を把握できたため、研究計画に従い、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果を受け、本年度は、より多数の樹種の林分における土壌中モノテルペン濃度を明らかにする。モノテルペンの生成については、樹種の影響が大きいため、林分を構成する主要な樹種だけでなく、下層植生についても詳細に記述されている支所構内の実験林で調査をおこなう。また、初年度から観測を進めている安比試験地では、先行して温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素)の吸収・放出量が観測されているため、これら温室効果ガス動態とモノテルペンの濃度の関係について、現地観測データから考察をおこなう。
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