2015 Fiscal Year Research-status Report
持続感染培養系を用いたノロウイルスの変異機序の解明
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26660231
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
花木 賢一 国立感染症研究所, 動物管理室, 室長 (40376421)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ノロウイルス / 持続感染細胞 / 電子顕微鏡解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスノロウイルス持続感染細胞の培養上清中ウイルス量を定量RT-PCR法によるウイルスRNA量で評価すると、培養時間とウイルスRNA量に高い相関(決定係数=0.95)が認められた。このウイルスRNA量は生細胞数(決定係数=0.67)よりも死細胞数と高い相関(決定係数=0.92)を示した。一生細胞当たりのウイルスRNA量は播種直後2.6E+4コピー、24時間後に最低の1.3E+4コピー、その後増加して144時間後に1.2E+5コピーに達した。培養時間と一生細胞当たりのウイルスRNA量には高い相関(決定係数=0.997)が認められた。 電子顕微鏡解析において、初感染細胞ではウイルス増殖に伴って細胞質に膜様構造物が形成されるが、持続感染細胞では膜様構造物を認めずにウイルス粒子が細胞質内小胞に集積して存在していた。その顆粒の存在部位を特定するために細胞内小胞マーカーとウイルス抗原に対する二重蛍光抗体法を行った持続感染細胞の共焦点レーザー顕微鏡解析をおこなった。その結果、後期エンドソームであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では遺伝子解析を中心に進める予定であったが、以下の理由で実施できなかった。代わりに研究協力者の行う電子顕微鏡解析を中心に据えて研究を進め、新たな知見が得られたので「やや遅れている」という評価とした。 平成27年3月31日付で岩手医科大学を辞職し、4月1日付で国立感染症研究所に着任した。内定通知は2月20日付と1ヶ月で引っ越す必要があり、教員一名から成る講座であり後任が居なかったこと、遠距離の異動であったことから実験機器と試料の速やかな移動ができなかった。そして、すべての移設が完了したのは平成27年11月26日であった。一方、国立感染症研究所では前任者が実験を行っていなかったため、実験スペースの確保には任期付研究員が任期満了となる平成27年度末まで待つ必要があった。さらに、職務内容と職責が大きく変わってエフォートは当初計画の15%から5%へ減らさざるを得なかった。以上が当初計画通りに研究が進んでいない背景、理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスノロウイルス持続感染細胞は培養上清中ウイルスRNA量で100倍異なる2株を作出している。そこで、2株の持続感染細胞を用いてウイルス排除可能な薬剤の探索を試みる。そのためには各薬剤の細胞毒性濃度をWST法により決定し、毒性を示さない濃度での抗ウイルススクリーニングを行う。評価は定量RT-PCR法による培養上清及び細胞内ウイルスRNA量の測定で行う。 平成28年度よりマウスノロウイルスの研究経験者一名を分担研究者に加える。分担経験者にはこれまで継代の度にストックしてきた培養上清を試料として、プラックアッセイ、ウイルスゲノムシークエンス解析を担当して貰い、ウイルスの性状変化の有無について明らかにする。
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Causes of Carryover |
勤務先と職責が変わったことにより、研究を遅滞なく遂行することが困難になった。その結果、実験に係る消耗品の購入は当初の計画通りに執行できず、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者を一名加え、研究費20万円を配分する。また、実験で汎用する低速遠心機が実験室内に備わっていないことからその購入費として20万円、現在取りまとめている論文の英文校閲料と投稿先をPLOS Oneとした場合の合計20万円、残りを研究試薬・消耗品、学会参加費用へ充当する。
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