2014 Fiscal Year Research-status Report
病的血管リモデリングの発症機転と質的変換機構の解明に対する挑戦的病態解析の試み
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26670177
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中川 和憲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50217668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼丸 満穂 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00380626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管リモデリング / 動脈硬化 / 血管平滑筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトアテローム動脈硬化の初期病変(び漫性内膜肥厚(DIT)、initial lesion、Foam cell lesionから前粥腫病変に至る過程)の病理について、内膜の平滑筋細胞(SMC)が密度低下する事を明らかにしてきた。この事象が、SMCの病変内分散によるのかバランスのとれた細胞増殖と細胞死の上に成立つのか明らかにするため、細胞増殖・細胞死関連マーカーの出現様式を検討した。その結果、MIB-1はごく稀に陽性細胞を認めるものの全てマクロファージ(MΦ)であり、SMCの積極的な増殖のエビデンスを認めなかった。一方細胞死関連で、BAXはMΦ(25.3~35.3%)、SMC(0.03~0.17%)、LC3Bは、MΦ(陰性)、SMC(1.0~4.2%)であったが、いずれも陽性率は病変グレードによる有意な相関は無く、またすべてTUNEL陰性で細胞死には直結していなかった。以上から、硬化内膜のSMC密度の低下は、積極的な増減平衡でなく既存SMCの肥厚巣での分散によることが示唆された。また内膜の脂質沈着は、脂質プール内での弾性線維の存在や、血漿タンパクさらにはプロテオグリカン類との共局在性により、壊死等による細胞溶解成分や膜リン脂質ではなく、血漿脂質に由来し、プロテオグリカンにより内膜内に滞留することで脂質プールを形成し、SMC密度の低下に寄与することが示唆された。 動脈硬化の進展病変の病理について、前粥腫病変以降のAdvance lesionの脂質プール内の細胞外基質にDアスパラギン酸の陽性所見を検出し、ラセミ変換といった非細胞生物的反応による物性変化が、脂質滞留などに影響し、進展病変の運命決定の一因を担う可能性が判明した。 また血管病変の非破壊的イメージング解析と病理組織像の相互理解に、膠原線維、弾性線維を総括したEVG・MT染色が近似することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・平滑筋細胞の増減動態平衡の影響因子について、一定の解析を終了した。 ・石灰化病変を含む組織標本では、脱灰による抗原性保持など検討すべき要素もあるが、Dアスパラギン酸に関しての条件検討を終え、計画に基づき解析を進めており、概ね作業仮説に想定する結果を得つつある。 ・組織の膠原線維、弾性線維を総括してイメージングした病理像で捉える手段としてEVG・MT改変染色が有望であるとの見解を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果を基に、動脈硬化硬化の進行病変の非細胞生物的な化学変化の影響についての研究進める。具体的には、ラセミ変換で生成するDアスパラギン酸に加え、AGEs(終末糖化産物)の検討を行う。特に糖化修飾の官能基の検出については、現在各種の抗体・染色条件を速やかに終え本解析に入る予定である。また、石灰化を含む標本の扱いについては、ダメージを最小限にするため、標本ブロックの表面脱灰にとどめた処理による抗原性保持への影響をチェックし評価を行う。イメージングに関しては、染色色素の改変などによる像について、実際に画像解析による定量評価をおこない、組織像とイメージング像の科学的近似性について評価を行う。
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Causes of Carryover |
進行病変の解析結果は、一部標本の抽出による解析条件の検討と中間評価であり、予定している標本の全症例の解析に至っておらず、それに伴い抗体や標本作成や染色抗体といった消耗品の消費が抑制されたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分は、解析の症例数の増加(次年度解析の繰越分の標本)に伴い、追加消耗品の購入に次年度分として必要でこの費用に充当される。またAGEs(終末糖化産物は、非酵素的修飾であり複数の修飾官能基の解析が必要であることから、科学的に想定されうる修飾官能基に対応した抗体のスクリーニング費用として、当初計画に基づき執行する。また、各マーカー検出にあっては、複数の抗体クローンによる追試検証も計画しており、これは解析結果の品質保障・精度の維持に不可欠な費用として執行を計画している。
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Research Products
(2 results)