2015 Fiscal Year Research-status Report
脊髄後角局所回路の光遺伝学的操作による痛み・痒み行動の制御
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26670289
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
八坂 敏一 佐賀大学, 医学部, 助教 (20568365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園畑 素樹 佐賀大学, 医学部, 准教授 (50304895)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 疼痛学 / 痒み / オプトジェネティクス / 脊髄後角 / 局所神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄後角細胞は皮膚感覚を脳に中継する。この役割を直接担う投射細胞の数は非常に少なく、多くの脊髄後角細胞は介在ニューロンである。しかし介在ニューロンも1次求心性線維の主な標的であり、脊髄後角で局所回路を構築して投射細胞への入力を修飾し、脳へ伝わる情報を調節していると考えられている。本研究の目的は、脊髄後角局所回路の各介在ニューロンの役割を明らかにすることである。そのため、脊髄後角に存在する様々な介在ニューロンに対して光遺伝学的手法を用いてマニピュレートし、局所回路出力に対する影響を調べ、その役割を明らかにする。 今年度はオプトジェネティクス用に購入した3種類の遺伝子改変マウスの凍結精子から個体復元を行った。購入したマウスは、パルブアルブミン(PV)陽性細胞にtTAを発現するマウス(PV-tTA)と、tTAが結合するtetO配列により細胞を興奮させるチャンネルロドプシン(ChR2)が発現するマウス(tetO-ChR2)、および同様のシステムで細胞を抑制するアーキアロドプシン(ArchT)を発現するマウス(tetO-ArchT)である。凍結精子を用いて人工授精・胚移植を行い、全ての系統について遺伝子改変マウスを得ることができた。また、得られたマウスを繁殖させ、tTAマウスとChR2マウスあるいはtTAマウスとArchTマウスを交配させダブルトランスジェニックマウスを作製した。また、マウスを灌流固定し脊髄の切片を作製してChR2やArchTの発現の指標として導入されているGFPの発現の観察を行い、PV抗体による染色と比較して発現効率を検討した。PV-tTA とtetO-ChR2との交配ではGFPの発現は低くPVとの共存も少なかった。しかし、PV-tTAとtetO-ArchTとの交配ではGFPの発現は高くPVとの共存はおよそ半程度であった。 実験機器として緑色のレーザー光源を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に遺伝子改変動物を3系統(PV-tTA、tetO-ChR2、tetO-ArchT)選定し凍結精子の発注を行っていた。本年度はその凍結精子からマウスを復元し、各系統を繁殖させることを第一の目的とした。また、次の段階として繁殖させた系統間で交配を行い、実験に用いるためにデザインされた動物を作製することを目標とした。 凍結精子からの個体復元は3系統とも一度の人工授精で成功させることができた。各系統のマウスの遺伝子型をタイピングして遺伝子改変マウスを確認し繁殖させることができた。また、実験に必要なマウスを得るためにはPV-tTAとtetO-ChR2、PV-tTAとtetO-ArchTを交配させることが必要であるため、まず、各遺伝子改変マウスのホモにすることとした(tetO-ChR2はゲノムβアクチン領域へのノックインであり、ホモでは胎生致死となるためヘテロで用いた)。その後、ホモPV-tTAと(ヘテロ)tetO-ChR2、ホモPV-tTAとホモtetO-ArchTを交配させてダブルトランスジェニックマウスを作製した。 今回も用いたマウスでは目的とする遺伝子の発現をGFPの発現としてモニターできるので、PVニューロンでのGFPの発現を観察した。PV-tTA とtetO-ChR2との交配ではGFPの発現は低くPVとの共存も少なかった。しかし、PV-tTAとtetO-ArchTとの交配ではGFPの発現は高くPVとの共存はおよそ半程度であった。同じPV-tTAマウスを用いているにもかかわらず、このような違いが見られたのは予想外であった。 昨年の遅れが影響しているが、本年度計画した内容はほぼ達成できたと考えている。マウスの繁殖には時間を要するため、野生型のマウスを持ちいて従来のパッチクランプ法による実験を行いPVニューロンの脊髄後角局所神経回路における役割を調べる研究も並行して行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ほぼ計画通りに研究を進めることができたと考えている。28年度より佐賀大学から鹿児島大学に所属が変更になることとなった。実験環境が変わり、設備の移動やセットアップ、マウスの搬送を行わなくてはならず、遅れが生じる可能性がある。これらの作業を可能な限り速やかに行い、研究の推進に最大限の力を注ぎたい。実験器具のセットアップとマウスの搬送が完了すれば、オプトジェネティクスによる電気生理実験を行う予定である。 上述したようにPV-tTAとtetO-ChR2を交配させたマウスのGFP発現が低かった。このマウスではPV-tTAはヘテロとなっているため、これらのマウスを交配させてPV-tTAがホモとなるようなマウスを作成すれば、GFP(ChR2)の発現を増やすことができる可能性がある。そのようなマウスを作成し、再度組織学的な検証を行う。 我々が行っているパッチクランプの方法として2つに大別できる。ひとつは細胞を視認せずに行う「ブラインドパッチ」と呼ばれる方法であり、もう一つは視認下の方法である。発現しているChR2やArchTが機能しているかどうかを確認するための実験にはGFP発現細胞を視認してパッチクランプを行う必要がある。しかし、今後実験を行う鹿児島大学の研究室では現時点でその実験に必要なシステムがない。貸与を受けることが可能かどうか、学内外に問い合わせを行い、実験を行えるよう努力する。 貸与を受けられない場合は、ブラインドでパッチクランプを行い、その実験終了後にスライスを固定して染色し、後から組織学的に確認を行う。しかし、PV発現細胞は極少数の集団であり、その上GFPの発現は全てのPVで見られているわけではないので、GFP発現細胞だけをブラインド法で記録するのは非常に効率が悪いことが懸念される。
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Causes of Carryover |
本年度は約90万円を繰り越した。今年度の計画はほぼ順調に進んだが、昨年度のマウスの発注の遅れが影響していることが理由となっている。本年度繰り越しした経費の多くは、マウスの飼育費とオプトジェネティクス実験に必要な経費である。オプトジェにティクスに必要な機器の内、主要な機器は既に購入済みであるが、実際に目的のマウス、すなわちPVニューロンにChR2やArchTが発現しているマウスができてからセットアップする予定であった機器もある。そのための経費を繰り越しとしている。また、佐賀大学から鹿児島大学に異動となったため、新しい環境でのセットアップのための予算を確保するため、繰り越しとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
佐賀大学から鹿児島大学へ異動したため、実験を継続するためには鹿児島大学で動物実験計画書、組換遺伝子実験に関する計画書が承認される必要があり、動物の搬入に時間を要するが早急にその作業を行う。また、パッチクランプ実験を行うためのセットアップも、新しく立ち上げることとなる。その際、新たにマニピュレータ等を購入する予定である。マウスの繁殖・維持には引き続き経費が必要となる。また、これまでは実験系の立ち上げに集中するため3系統のマウスのみを選出したが、脊髄後角のインターニューロンには多様であり、今後異なったインターニューロンについて調べるためには、マウスの購入費がさらに必要となる予定である。今回購入したChR2やArchTマウスはtetOにtTAが結合することによって発現する。他のインターニューロンマーカー遺伝子によりtTAの発現調節ができるマウスを購入する予定である。
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Research Products
(7 results)