2015 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトールリン脂質PI(3,5)P2産生経路の破綻による壊疽性膿皮症の発症機序
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26670518
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
蓮沼 直子 秋田大学, 医学部, その他 (10282170)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | PIPKIII / イノシトールリン脂質 / 炎症性皮膚疾患 / 細胞内小胞輸送 / 空胞形成 / タモキシフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスファチジルイノシトールは、細胞膜に普遍的に存在し、そのイノシトール環水酸基がリン酸化あるいは脱リン酸化を受けることで,イノシトールリン脂質(ホスホイノシチド:PIs)と総称される代謝産物が派生する。PIsは数々の機能タンパク質の集積、離散、活性を制御しており、PIs代謝酵素の活性が遺伝子変異などにより変調すると、様々な病態が形成されることが報告されている。興味深いことに、PI(3)Pの5位水酸基をリン酸化し、PI(3,5)P2を生成するプロテインキナーゼ、PipkIIIを腸上皮細胞特異的に欠失させたマウスでは、クローン病に類似した組織像を示すことが報告されている。 本研究では、クローン病と共通の病態基盤を持つと推測されている壊疽性膿皮症の分子病態を解明するため、角化細胞特異的にPipkIIIを欠失したマウスを作成し、皮膚病変を形態学的に観察するともに、皮膚病変発症と薬剤感受性に関わる全ての遺伝子群の網羅的解析を目指した。 当初の研究計画通り、Keratin 5 (K5)-Creマウスを用いて角化細胞特異的なPipkIII欠失マウスの作製を試みたが、この変異マウスは生後数時間で死亡することが判明し、その後の解析が困難になった。HE染色で変異マウスの表皮を解析したところ、表皮、および毛包上皮に著しい空胞形成がみられた。これにより表皮の恒常性が破綻し、死亡に至ったと考えられた。 生後の表皮でPipkIIIの機能解析を可能とするために、計画を変更しタモキシフェン (TAM) を用いた誘導型PipkIII欠失マウスを作製した。その結果、TAMを塗布した部位に一致して表皮、および毛包上皮に著しい空胞形成がみられ、K5-Creマウスを用いた表皮特異的PipkIII欠失マウスと同様の表現型を再現できた。
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