2014 Fiscal Year Research-status Report
反回神経の再生における標的特異性と過誤神経支配に関する基礎的研究
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26670744
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
湯本 英二 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (40116992)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 反回神経 / 頸神経ワナ / 神経再建 / 神経選択性 / 甲状披裂筋 / 神経終末 / 神経線維 / アセチルコリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウサギ四肢筋を用いた研究で、本来の支配神経を切断・移植すると他の筋の支配神経を移植するよりも優位に再生することが報告されている(Elsberg CA, Science 1917;45:318-320)。本研究では、運動神経線維再生の方向はランダムに決まるのか、もしくは本来の標的筋に優位に再生するのかを、反回神経と頸神経ワナを競合させる動物モデルで検討することとした。 まず実験に必要な細径のY型シリコンチューブが市販品で入手可能かどうかを検討したところ、本研究に用いることのできるチューブは市販されていないことがわかった。そこで、チューブの試作が可能な会社(㈱塚田メディカル・リサーチ)と交渉し昨年末に実験に用いることのできる試作品が完成した。 実験にはWistar系ラット、メス8週齢を用いた。声帯運動が正常なことを確認した後、輪状軟骨下端から10mmで左反回神経を切断し即時に末梢側断端をY型チューブの内腔に1mm挿入し9-0ナイロン糸でチューブに縫合固定した。Y型チューブ二股側の内腔には反回神経中枢側断端と頸神経ワナ中枢側断端をそれぞれ1mm挿入し末梢側と同様に9-0ナイロン糸で縫合固定した。反回神経末梢側断端と反回神経中枢側断端あるいは頸神経ワナ中枢側断端との距離は2mmとなるようにY型チューブを作製した。現在までに5匹の動物モデルを作製した。内、操作後12週を経過した2匹を安楽死させてY型チューブを除去したところ、1匹では反回神経中枢側断端と反回神経末梢側断端の間が神経線維を含むと思われる結合組織でつながっていたが、頸神経ワナ中枢側断端から反回神経末梢側断端に連続する組織は認めなかった。他の1匹では反回神経中枢側断端および頸神経ワナ中枢側断端から伸びた組織が1本となって反回神経末梢側断端に連続していたが、手術顕微鏡下に見ると非常に細かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に用いることのできるY型シリコンチューブを安定して入手できるようになるまでに時間を要したので動物実験は今年になって始めることとなった。そのため、モデル動物①を12匹作製した段階である。少数例における準備的な検討であるが、頸神経ワナ中枢側よりも反回神経中枢側のほうが反回神経末梢側に向かって伸張する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
手術操作手技を安定させるためにモデル動物の個体数を増やす。手術顕微鏡下に観察される神経断端間の所見が安定した時点から、それぞれの断端の神経とチューブ内組織の免疫染色(抗Neurofilament抗体、抗Myelin Basic Protein抗体)を行いチューブ内に再生した神経線維数、髄鞘の再生程度を評価する。また、喉頭を摘出し、甲状披裂筋内神経線維数、神経終末数、アセチルコリン受容体数を定量的に評価する。異なる筋を支配する神経線維よりも本来の神経線維が内喉頭筋の再支配において標的特異性を有するかどうかを検討する。さらに機能的な観点から誘発筋電図検査を行い潜時と振幅を比較する。 ラットを用いた動物モデルで異なる神経間に標的特異性の存在することが示唆されれば神経再生の方向性にかかわる遺伝子を検討する。多量のRNAを必要とするため実験にはビーグル犬を用いる。total RNA 採取から遺伝子データ解析までは外注で行う。 上述の研究遂行には多数の小動物、少数ではあるが高価なビーグル犬、多量の各種抗体、および外注費用が必要なので本研究費を用いて購入する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に動物実験を開始したが、実験に使用するのに適当なY型シリコンチューブの作製に時間を要したために年度内に作製できたモデル動物少数であった。必要な動物(ラット)、抗体や試薬を購入しなかったため次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度はモデル動物の個体数を増やし、免疫染色と誘発筋電図検査によりY型チューブ内と喉頭内における神経再生の程度を評価するために平成26年度から持ち越した研究費を使用する予定である。
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Research Products
(56 results)