2016 Fiscal Year Annual Research Report
大気中微粒子の増加要因と雲核活性の解明:エアロゾル・クライマトロジー構築にむけて
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26701001
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松木 篤 金沢大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90505728)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エアロゾル / PM2.5 / 大気汚染 / 同位体 / 気候変動 / 雲凝結核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画では、能登半島先端の大気観測施設において、エアロゾルの連続観測を行い、その季節変化や増加要因を正確に把握し、雲核としての活性化能も含めた粒子の物理化学的特性を明らかにすることを目的としている。平成28年度は、国際データベースへの具体的な貢献として、世界11カ所の大気観測拠点で集められたエアロゾル(雲凝結核)観測データの国際比較研究に参加した。のべ14カ国、23研究機関、70名余の研究者が関与したこのキャンペーンに本計画も加り、その結果はScientific Data誌に国際共著論文として掲載されたほか、ACTRIS大気観測国際ネットワークのデータベースを通じてアクセス可能になっている。この大規模なデータセットは今後、数値モデルおよび衛星観測結果の検証などを通じ、体系的なエアロゾル雲凝結特性の理解に向けた大きな貢献が期待される。 また、平成28年度は能登に飛来するエアロゾルの同位体分析を集中的に行う予定であったが、炭素同位体については昨年度までに前倒しで分析結果がほぼ出揃っていたため、特にSr-Nd-Pbなどの重金属同位体組成の分析を集中的に行った。エアロゾルの起源には様々な自然、人為的発生源が存在し、しばしば両者の切り分けが難しい。その点、重金属元素は同位体効果を起こしにくく、一次的発生源の地球化学的な情報を保持していると考えられるため、大気エアロゾルの起源推定に有効だと考えられる。とりわけ、大気エアロゾルを弱酸溶解性物質とその残渣に区別して同位体組成を分析した本計画の結果は貴重であり、高精度な起源の特定が可能となった。その結果、①従来から黄砂の影響を受けやすい春季や秋季だけでなく、夏季にも黄砂が飛来する(大陸からの輸送を裏付ける)化学的な証拠、および②能登地域においては、越境大気汚染だけでなく、桜島火山灰の影響も受けることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際データベースへの貢献に関連して具体的な成果が得られたほか、平成28年度までの活動を通じてエアロゾルの炭素および重金属元素の同位体分析が完了し、最終年度に向けて計画通りに推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も引き続き研究期間全体を通じた各種エアロゾル観測装置による観測体制の維持、および国際データベースへの貢献に務める。特に、本年度は計画の最終年度にあたることから、期間を通じて得られた成果のとりまとめに重点を置く。
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Research Products
(33 results)