2016 Fiscal Year Annual Research Report
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26702039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 正晃 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00716186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 報酬 / 連合学習 / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに確立した、動物心理学を背景とした連合学習理論によって支持され、学習度合いによって獲得される注意の相対的関係が変化する条件刺激―報酬間の学習過程において、眼窩前頭皮質と深い関係のある脳領域の神経細胞活動を明らかにする実験を行った。頭部固定下のラットが、異なる報酬確率と条件づけされた異なる匂い刺激の提示後に、レバーを引くと報酬(水)を得るという一連の行動において、今年度は、眼窩前頭皮質からの報酬予測関連信号を受け取り、強化学習に関与すると言われる中脳ドーパミン細胞にフォーカスした。中脳ドーパミン細胞からの電気活動記録実験は一般に困難であるが、様々な条件検討を行い、単一電気活動記録ができるようになった。すると、申請者が過去に眼窩前頭皮質で見つけたような、確実な報酬よりも不確実な報酬を予測する条件刺激後により反応が高くなる単一神経活動を見出した。またこの活動は、試行毎の反応行動速度の変動には影響を受けないことを見出した。従来のドーパミン細胞研究において同様の発火様式は見出されておらず、極めて新規性は高い。 また、ラットで、眼窩前頭皮質神経回路の光遺伝学的操作のために、ウイルスベクターの開発ならびに実際の条件検討をラット、マウスで行った。遺伝学的カルシウムインディケーターを用いた神経活動イメージングのために、数種類の遺伝子改変ラットを導入、評価し、さらにウイルスベクターの条件検討を行い、記録系セットアップを開始した。また、光遺伝学法の技術確立のためのマウスを用いた眼窩前頭皮質の役割の研究は、投稿に近い段階までデータ取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生理学研究所から京都大学への所属研究室の移動によって動物実験が3ヶ月弱程度停止したものの、ラットで、匂い条件刺激―レバー引きー不確実な報酬間関係の学習過程をみるための行動が、個体間である程度一定になるような条件を確立することができた。電気活動記録についても、様々な条件検討を行い、確立した方法を今後繰り返すことによって、データ取得ができる段階になった。実際に、報酬系情報処理において眼窩前頭皮質と深い関係にある中脳ドーパミン細胞の新規活動様式を明らかにしつつある。また、京都大学ではSPF化したラットのみが繁殖可能であるので、目的にしていた遺伝子改変ラットのSPF化を行い、それらの導入を終えた。ウイルスベクターとの組み合わせにより、光遺伝学的操作実験に使用できることを確認している。さらに、これらのラットで遺伝学的カルシウムインディケーターを用いたイメージングのためのセットアップを開始している。またマウスで眼窩前頭皮質が果たす役割についても投稿に近づいている。
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Strategy for Future Research Activity |
条件刺激―報酬間の学習過程における眼窩前頭皮質関連領域の単一神経細胞電気活動記録のデータ取得をすすめる。また、眼窩前頭皮質神経回路操作のための光遺伝学的手法を活動記録と統合する。また、遺伝学的カルシウムインディケーターを用いたイメージングについてもデータ取得を進め、電気活動記録のデータと補完する形で投稿できるよう計画している。
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Causes of Carryover |
初年度のポスドク雇用開始の遅れのため生じた昨年度までの繰り越し額はほとんど使用したが、若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額であるので、物品費に充てる予定である。
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