2015 Fiscal Year Annual Research Report
有機無機ハイブリッド色素集積体の合成と光音響造影剤としての応用
Project/Area Number |
26708024
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 康嗣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60422979)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近赤外色素 / 高分子 / 複合体 / 腫瘍 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコンナフタロシアニンやシアニン系色素のように典型元素を含む近赤外色素の開発が活発である。本課題ではこれらの近赤外色素を、あたかも規則性を持つ無機材料の様に集積化しつつ、有機高分子と複合化した材料を創出し、光および光音響腫瘍造影剤として利用することを目的としている。 平成27年度はシリコンナフタロシアニンや他のシアニン系色素を集積化し、高分子との複合体を形成させることを目的とした。シリコンナフタロシアニンの芳香環上に置換基を導入し、そこを起点として、ポリエチレングリコール(PEG)との複合体形成に成功した。シアニン系色素として、インドシアニングリーンの構造に注目し、インドシアニングリーンと多糖類縁高分子との複合体を創製した。 これら得られた色素-高分子複合材料が水中で自己集合体を形成すること、強い光音響信号を発することを明らかにした。特に後者は、静的光散乱法により希薄な水溶液においても解離しにくい自己集合体を形成することがわかった。この造影剤を担がんマウスに投与することで、特に光イメージングにより腫瘍をコントラスト良く可視化することに成功した。 さらに、ジピロメテン系色素とPEGなどの高分子との複合体の創製に成功し、これが水中で形成する自己集合体からの光音響信号を測定したところ、同じ色素を用いているにもかかわらず差があることを明らかにした。また、強い光音響信号を発する分子構造として、色素自身ではなく、PEGなどの高分子の熱膨張を引き起こしやすいものが良いことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では昨年度、シリコンナフタロシアニンやシアニン系色素を結合した高分子複合材料の創製を行った。また、それらが水中で自己集合体を形成すること、強い光音響信号を発することを明らかにした。これらは当初研究計画に記載した内容が順調に進捗していることを示す。 また、本課題では昨年度、上記で合成した色素-高分子複合材料を用いる担がんマウスの光腫瘍イメージングを行った。その結果、合成した複合材料が光腫瘍造影剤として機能し、腫瘍に効率良く集積することを明らかにした。これは当初研究計画に記載した内容が順調に進捗していることを示す。 さらに、本課題では昨年度、ジピロメテン系色素と高分子との複合材料の創製に成功した。この複合材料の光音響信号強度を測定している過程で、強い光音響信号を発するための造影剤の分子構造について新しい知見を得た。これは、当初予定していなかった研究進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、シリコンナフタロシアニンやシアニン系色素、ジピロメテン系色素と高分子との複合体の形成を中心に、光および光音響腫瘍造影剤の開発を推進する。これらの水中での諸物性を明らかにするとともに、PEGや多糖類縁高分子の分子量、構造が与える影響を精査する。 また、上記で見出した造影剤を用いる光および光音響腫瘍イメージングを行い、特に効果的な光音響造影剤を開発する。担がんマウスを用いるイメージング実験を数回行い、情報を還元し、最適な造影剤の創製を目指す。 さらに、近赤外色素と高分子との複合体が形成する自己集合体の形状、サイズ、構造が光音響信号強度に与える影響も調査したい。
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