2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26711023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小薮 大輔 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (60712510)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 進化 / 発生 / 頭蓋 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類が哺乳類型爬虫類の一群から起源した過程で,哺乳類型爬虫類において40個ほどの骨が構成していた頭蓋は哺乳類で28個の構成骨に減少した.これら10数個の骨は哺乳類に至る系統で完全に喪失したと考えられてきた.しかし,失われたと従来考えられてきた骨のいくつかは実は哺乳類でも保持されている可能性が出てきた.そこで,これらの骨は胎子期には存在しており,それらが発生の進行の過程で癒合が進むことで見かけ上の骨数が哺乳類で減ったかに見えるようになったという作業仮説を立て,本年度からその検証を行った.共同研究先である理化学研究所において,羊膜類脊椎動物(マウス・ニワトリ)を材料として,実験発生学的手法を用いて頭蓋冠における骨,軟骨,筋肉,脳,末梢神経,各形態パーツ相互の相対的位置関係を組織染色によって記載し,Amiraアプリケーションによってそれらの三次元的再構築を行った.また,頭蓋骨の縫合に形成・促進に関連する遺伝子(Frfbr2, Ihh, Pthc1,Tgfr2)の発現パターンを分析するため,in situ hibridizationによる実験を進めた.遺伝子のクローニング,プローブの作製も進行し,来年度からのDIG標識実験への目処が立った.また,オーストラリアおよびシンガポールにて現地自然史博物館に収蔵されている哺乳類の胎子標本の観察を行い,胎子期における頭蓋骨形成の種間変異の分析を進め,スペインではバレンシア大学にて共同研究者とともに頭蓋骨の各骨パーツの発生と癒合の数理的パターンの分析をした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究補助者を雇用することで実験と解析が当初予定より進行が順調に進み,さらに新規に発売された蛍光顕微鏡および撮影機材を導入したことで,実験での観察が迅速化した.
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Strategy for Future Research Activity |
脳は胚頭部の中でも最も早期に形成される構造であり,シグナルセンターとして働く中脳-後脳境界をはじめ, 頭部周辺の構造を誘導・規定するうえで重要な役割を担うことが知られる.特に頭蓋冠は脳と近接しており,各骨の形成・アイデンティティが脳の影響を強く受けている可能性がある.脳の各領域と将来骨格の発生する位置との関係を導出する.このとき,アリザリンレッドによる骨格発生 の記載に加え,in situ ハイブリダイゼーションを行い,骨格の前駆組織に特異的なSox9, Aggrecanの発現を確認する.本年度の研究経過により,頭蓋骨の各骨パーツと神経の発生過程の把握の目処が付いたが,この過程で頭蓋骨の各骨,特に膜性骨パーツに対する血管系の位置関係の重要性が認識された.血管系の組織染色の技術導入を新たに進める予定である.
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Causes of Carryover |
研究補助者都合により想定の雇用時間が確保できず,結果として余剰が生じることになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
余剰した研究費は次年度の研究補助者への謝金に充てる.
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Research Products
(3 results)