2014 Fiscal Year Research-status Report
人為的活動起源トリウムの雲粒核形成メカニズムの解明
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26740012
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
大久保 綾子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター, 室長代理 (70415412)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人為的活動起源 / トリウム / 雲粒核 / 降水 |
Outline of Annual Research Achievements |
人為的活動起源のトリウムが雲粒核の生成に関与している可能性を示すデータは、これまでのところ、春季の観測結果に限られている。そこで本研究計画では、年間を通しての降水試料を採取して、人為的活動起源トリウムの雲粒核形成に関する季節性を調べることを目指した。また、次年度以降に行う、雲粒核形成に関するメカニズムを解析するための室内実験用の試料として、エアロゾル試料を採取した。観測は、日本原子力研究開発機構の研究棟の屋上(茨城県の太平洋沿岸から約1キロメートル内陸に位置する)で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
降水サンプラーを作成して、年間を通しての降水試料を採取した。降水試料は、経時変化を調べるために、降り始めからの時間ごとに採取した。採取した降水試料は直ちに濾過し、溶存態フラクションと粒子態フラクションに分け、両フラクションの以下の項目について分析・解析を行う。1. トリウム濃度とトリウム同位体比、2. 土壌粒子の主要元素濃度(アルミニウム・鉄・チタン・スカンジウム)、3. 人為的活動起源の元素濃度(鉛・バナジウム)、4. 主要イオン濃度(硫酸・硝酸・亜硝酸・ナトリウム・カリウム・マグネシウム)、5. 後方流跡線解析による空気塊の起源推定 トリウム同位体比の分析は、表面電離型質量分析計で行う。極微量のトリウム同位体比を測定するため、測定時のイオン化効率を上げる目的で、ベンゼンを添加したフィラメントを用いた。これまで、炭素の供給源としてコロイダルグラファイトを添加する方法を用いてきたが、懸濁溶液という性質上、濃度の制御が難しく再現性にばらつきが見られた。ベンゼンを添加した場合は、コロイダルグラファイトと同様にトリウムのイオン化効率が上昇し、また再現性も安定していた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降も、降水試料の採取と分析を継続する。また、トリウム濃度と吸湿特性を調べるための室内実験を実施する。 室内実験については、トリウム含量を変化させたエアロゾル試料について、吸湿特性を調べる。具体的には、エアサンプラーでフィルター上に採取したエアロゾルを、超純水に懸濁させた後、添加するトリウム濃度を変化させた時の吸湿特性の変動を、タンデムDMA装置で測定する。雲粒形成能に関するパラメータの一つであるトリウム濃度を変化させて、吸湿特性がどのように変化するのかを調べる。
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