2014 Fiscal Year Research-status Report
実践知と科学知の循環型研究に基づいた走能力向上のためのトレーニングモデルの構築
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26750278
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 俊典 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (80555178)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コーチング / スプリント走 / トレーニング / 縦断的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年は、大学陸上競技部のトレーニングに実験的に介入し、データの収集および分析を継続的に行うための方法論(システム)作りを中心に検討を進めた。特に、「選手とコーチの実践的知見の集積とその理論化」について縦断的に検討を進めるために様々な測定をパイロット的に行うとともに、データの集積方法についての試験的モデルの実践的検討を試みた。具体的には各トレーニングサイクルにおける客観的(科学的)なトレーニング診断・評価として、2014年8月、12月、および2015年3月にMRI(大腿部全体および体幹部ヤコビーライン上)による筋量および脂肪量測定、バイオデックスによる下肢筋力測定、地面反力計を使用した疾走動作中の力発揮特性の評価、および各種フィールドテストのデータ収集を行った。また、出場試合のパフォーマンス分析を行うことと並行して、実践的知見の収集にあたっては、競技者およびコーチへのインタビュー調査を11月および2月に行うとともに、継続的にコーチング活動の記録とトレーニング日誌の収集を行ってきた。 現在のところ、およそ半年間のデータしか収集できておらず、縦断的なデータとしては十分であるとは言い難い。その上でこれまでに、疾走速度に影響を及ぼす体力的・技術的要因は個人内および個人間では異なること、選手の内省とコーチの評価といった質的・実践的情報と客観的に評価された医科学的データとの対応関係についても個人差がみられる傾向のあること、トレーニング日誌によるトレーニング状況の評価方法については、トレーニング負荷(量および強度)以外の評価指標が必要になることなどが示されつつある。ただし、未だ研究期間が短いために、上述のように科学的知見と実践的知見とをそれぞれ収集している形となっており、それらの循環・融合という本研究の主要な課題に対しては、さらなるデータの蓄積・集積が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試合スケジュールやトレーニング計画、および対象者の怪我等の関係から、当初の予定であった測定頻度についてはすべてを達成することができなかった。しかし、大学のトップ選手を扱う介入型の実験形態であることを考慮すれば及第点と考えられる。 検討課題の1つであった対象とする女子選手とほぼ同程度の競技力を有する男子選手との比較については、測定時期等の関係で初年度に行うことができなかったので、次年度に検討を進めることとしたい。 本年度は予算執行との時期的なタイムラグ、研究データの収集方法に関する試行段階の時期的な問題と陸上競技短距離種目の試合カレンダー(オンシーズンが4月から10月くらいまで)などの影響で、試合期の中盤からデータ収集がスタートしてしまった。実際には、オフシーズンにおける移行期から準備期、そして試合期といったトレーニング周期の流れでデータを整理することによって、年間トレーニングの全体像が浮かび上がってくることが推測されることから、本年度の11月から次年度の11月までのデータを継続的に収集することによって、1シーズンのデータとしてまとまりのあるものとなる。したがって、昨年度から継続しているデータ収集を次年度の11月に1シーズンのデータとしてまとめることによって、縦断的データのフィードバックと試合・トレーニング計画の再構築に対する記述・分析がスタートできるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、4月からはじまる試合期の試合計画、試合時のパフォーマンス分析(量的および質的データ収集)、トレーニング計画およびトレーニング実施状況など試合論およびトレーニングマネジメント論に関わるデータの収集を継続的に行う。それとともに、試合期の中間段階である7-8月に科学的なトレーニング診断・評価として、昨年度から継続して行っている科学データの収集を予定している。なお、その際に、昨年度に測定することのできなかった男子選手のデータの測定を行い、疾走能力の男女差について検討する予定である。11月には昨年度から開始したデータの収集が1シーズンとしてまとめられるので、全体のフィードバックと今度の測定方法について再検討するとともに、科学的知見と実践的知見を融合・循環についてトレーニング現場ではどのように扱われているか、そのトレーニングモデルとはどのようなものかについての理論的枠組みの形成にむけて調査・分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
物品費のうち、動作分析用に予算を計上していたソフトウエアが現在所有しているもので汎用できたこと、および3月に行った実験に関わる経費(謝金等)の支払いが年度内に会計処理できなかったために次年度に繰り越されてしまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の3月に行った実験に関わる経費(謝金等)を支払うこと、および動作分析に関わるビデオカメラの周辺機器およびソフトウエアの更新、関連ソフトなどの消耗品を購入予定である。
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