2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26750299
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
中里 浩介 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 契約研究員 (40708088)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルペンスキー / 移動式床反力計 / 傷害 / 転倒 / 膝関節 / ACL |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究は雪上でのアルペンスキー滑走時の床反力を計測可能な移動式床反力計の開発、精度の検証および雪上での実測であった。しかし、雪上でのスキー滑走時に床反力を計測可能な移動式の床反力計という特殊な装置の仕様を選定するのに非常に多くの時間を費やすこととなった。 床反力計の具体的な仕様は、鉛直方向の反力が5000Nまで、各軸周りのモーメントが400Nmまで計測可能であること、重さは片脚あたり1.5kgを目指していたが、測定精度や耐久性を考え2kg程度であること、また、割り当てていた予算内での作成が可能であることであった。またシステム一式が防水加工してあり、低温下でも計測可能である必要があり、これらの選定に時間を費やした。 開発と並行して、大学スキー選手を対象に、傷害の現状を調査すべく傷害に関するアンケート調査を実施した。平成26年度に行われた全日本学生スキー選手権大会に参加した大学アルペンスキー選手を対象に、既往歴、受傷部位や発生状況等に関するアンケートを実施した。結果、3月末の段階で63名の大学生アルペンスキー選手からの回答を回収でき、63名中既往歴を有している選手が31名(49.2%)であった。31名のうち、膝に傷害を負った選手が最も多い18名(58.1%)という結果となった。膝関節の外傷の大部分が靭帯断裂及び損傷であった。また、全傷害の発生要因の80%以上が滑走中の転倒および滑走中にバランスを崩し立て直そうとしていた際に起こったものであった。また、脚のタイプはX脚またはO脚が多く、インソールを入れる等の調整を行っている選手がほとんであった。脚のタイプにより、滑走中の力の作用点にも影響を与える可能性があることから、滑走中の地面反力および力の作用点と、脚のタイプやブーツの調整を考慮し、可能な限り実環境に近い動作中の反力計測をする方向で今後は進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度末の時点での達成度は当初の計画よりやや遅れている。当初の計画では、夏頃にセンサを開発・発注し、納品でき次第妥当性の検証を行い、冬から春にかけて雪上実験を予定していた。 大きな原因の一つが、特殊な計測装置故に仕様の選定に非常に多くの日数がかかってしまったことにある。 その一方で、アンケート調査を実施したことにより、X脚、O脚のタイプや、スキーブーツのセッティングなどの要因と床反力および力の作用点を結びつけて考える新たな方向性を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究は、若干仕様と異なる部分があり、納品された床反力計を業者に送り直し修正することから始まる。今後もトライアンドエラーを重ね、修正していく必要も出てくるかもしれない。 その後、妥当性の検証および精度の検証を行う。また、ローラースキーを用い、陸地でのスキーを模したターン動作の地面反力計測も予定している。精度の保証が出来次第雪上実験を行い、アルペンスキー滑走時の床反力の実測を計画している。 また、傷害調査のアンケートを実施したことで、脚のタイプやスキーブーツの調整等を考慮して傷害に対してアプローチしていく方向で考えている。 立位の姿勢でX脚の人は膝が内反することにより、圧力中心は足の内側に位置しやすいと考えられる。これでは両スキーの内側のエッジが立っている状態を作り出してしまうため、作用点が真ん中に来るようにスキーブーツを調整したり、インソールを入れたりしている選手が多い。しかし、実際の運動中の作用点または圧力中心がどこにあるのかということは、実測しない限り分からない。これらのことから、脚のタイプとブーツの調整を含め、傷害発生の要因を探ることで、メカニズムの解明につながることが期待できる。
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Causes of Carryover |
当初の計画では移動式床反力計の発注および納品を当該年度内に行う予定であったが、雪上で測定可能な床反力計という特殊な装置故に、床反力計測システムの仕様の選定に多くの時間を費やしてしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に移動式床反力計は仕様も決まり作成してもらっている。今後は室内での妥当性検証実験及び雪上の実動作の計測実験に予算は充てられ、平成27年度内にそれぞれ実施予定である。
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