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2014 Fiscal Year Research-status Report

19世紀後半のフランスにおける自由論と自我論――その交錯と展開

Research Project

Project/Area Number 26770002
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

村山 達也  東北大学, 文学研究科, 准教授 (50596161)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords19世紀フランス哲学 / 自由論 / 近世哲学
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、本来の主題である19世紀後半に関しては、資料収集と分析にあわせて、ベルクソンの方法論(定義論)についての研究を行ない、主催した研究会においてその成果を発表した。哲学における定義としてベルクソンが掲げる理想が、17世紀のいわゆる大陸合理主義におけるそれと多くの類似性をもつこと、また、その観点から見たとき、定義一般に対するベルクソンの忌避や、「自由は定義できない」といった言明についても、従来とは異なる分析が必要となることが明らかになった。この研究はなお継続中であり、次年度中に論文として公刊する予定である。
また、自由論については、今年度は主に17世紀を対象とし、背景をなす問題との繋がりや、当時の自由論に含まれている困難にも留意して研究・発表を行なった。この研究において得られた成果は、次年度以降における、19世紀後半の自由論の検討において、その歴史的・論争的背景や、理論的射程を明らかにする上で、重要な基礎を提供するものである。
まずは、パスカルについて、護教論のレトリックの解明という課題のなかで自由論の検討を行なった。いわゆる「パスカルの賭け」という議論が、人間の自由と神の恩寵との複雑な絡み合いのなかで構築されていること、そして、「パスカルの賭け」が、あくまで、人間の能動的行為で可能な限りでの信仰へと人を導こうとするものであることが明らかになった。
次に、デカルトについて、彼の倫理学という枠組みのなかで、その自由論の検討を行なった。彼の倫理学の最大の特色、ないし貢献とも言える、自由意志の価値の称揚が、価値判断の明証性という概念との密接な結びつきのもとにあること、他方で、価値判断の明証性という概念が倫理学的にはいくつかの問題をもっており、デカルト以降の自由論や認識論を、その問題への対処として捉える可能性があることが明らかになった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

以上の成果は、19世紀後半の自由論を直接の対象とはしていないが、それを研究する上で重要な背景を構成するものである。とりわけ、自由論が、認識論や宗教論と密接な関係にあることを、具体的な哲学者に即して明確化できたことは、19世紀後半の自由論、とりわけベルクソンの自由論を検討する上で、大きな示唆を与えるものである。これらの点については、期待以上の成果を挙げることができた。
他方で、本来の主題である、19世紀後半については、定義論については公刊に至っておらず、自由論についても、いまだ分析の段階にあり、成果の発表には至っていない。いくつかの資料もまだ未収集である。よって、全体としては「当初の計画以上」ではなく「おおむね順調」だと判断した。次年度については、こちらの研究に傾注し、成果を発表するつもりである。

Strategy for Future Research Activity

上記のとおり、19世紀後半の自由論を検討し、同時にそれと自我論との関係を明らかにすることが、今後の課題である。
資料についてはおおよそ集めることができたが、また未収集のものもあるため、いましばらく調査・収集を続ける。
分析としては、二つの側面から行なうことを予定している。第一には、ルヌヴィエ、ラシュリエ、ベルクソンの自由論・自我論を主に取り上げ、対比させて、それぞれの特質を明らかにすること。もちろんその際には、今年度の研究で得られた成果(とりわけ認識論と自由論との関係)にも十分に留意する。第二には、とりわけベルクソンについて、その方法論の解明の一環として、定義論を明確化すること。これは、たんに方法論研究にとどまるものではなく、「自由は定義できない」という彼の自由論の重要テーゼの解明、ならびに、彼の自由概念の特徴を明らかにすることを目的としたものである。

Causes of Carryover

予定していた資料調査が不要になるなど、当初に想定していた以上に計画が順調に進展したため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

未入手の資料の収集に使用するほか、成果発表の機会を増やしてその必要経費・旅費として使用する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2015

All Book (2 results)

  • [Book] 文化理解のキーワード2015

    • Author(s)
      村山達也(共著)
    • Total Pages
      pp. 139-185
    • Publisher
      東北大学出版会
  • [Book] 自然観の変遷と人間の運命(印刷中)2015

    • Author(s)
      村山達也(共著)
    • Total Pages
      -
    • Publisher
      東北大学出版会

URL: 

Published: 2016-06-01  

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