2015 Fiscal Year Research-status Report
菅原為長に関する資料および作品についての基礎的研究
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26770097
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 真弓 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (20420416)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 菅原為長 / 願文 / 石清水八幡宮 / 宗清 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世初頭に活躍した文章博士菅原為長(1158~1246)の事蹟と、彼が成した作品あるいはその断片を整理・考察することで、その著述活動の全体像を明らかにすることを目的とする。 本年は、為長が執筆した『本朝文集』所収「石清水八幡宮権別当田中宗清亡息追善願文」を中心に、田中宗清が当時の文人たちに依頼して作成させた願文群の調査をおこなった。まずは石清水八幡宮が所蔵されている史料を閲覧調査し、次に、山外に流出したと考えられる願文を探査した。その一つが京都大学附属図書館に所蔵される藤原孝範願文であり、この願文を考察することで、田中宗清の伝記的事実や子どもの実名などが明らかとなった。 田中宗清を願主とする願文群は、その内容を詳細に見ると、大きく二種類に分けることができる。為長が執筆した願文は、現在石清水八幡宮には所蔵されていないが、重要文化財に指定されている「田中宗清願文」二巻と同じく、息子の章清を追善する願文のグループに分類される。それらの考察の結果については、佛教文学会大会(2015年9月、近畿大学)にて口頭発表した。 また、調査の過程で、山形市の寺院に伝わる藤原定家筆の願文の存在が知られた。この願文については佛教文学会の発表でも取り上げたが、山形県の重要文化財に指定され、ホームページ上でも紹介されているものである。定家については天理図書館に「願文案」があることが知られ、山形市の定家願文も従来それと関連づけられてきた。しかし、願文を精査すると、「願文案」とはまったく別の内容であることが明らかとなった。この点については今後も調査をすすめ、発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、菅原為長の「石清水八幡宮権別当田中宗清亡息追善願文」を起点として、田中宗清を願主とする願文群の考察をおこなった。石清水八幡宮では、重要文化財の「田中宗清願文」二巻を調査した。また、菅原為長の執筆と考えられる関連願文も閲覧することができた。さらに、為長を含め、文人たちの願文作品の断片が、田中宗清の孫によって成された『鳩嶺集』に残されていることを確認した。 石清水八幡宮以外にも、京都大学附属図書館などで調査をおこない、成果を得ることができた。特に山形市内の寺院における調査では、今後の研究に繋がる史料を探査することができた。 研究の一部については、学会発表で報告することができている。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、菅原為長の事績と作品を中心的に考察することを目的としているが、本年の研究では、為長を含む願文執筆にまつわる交流圏・背景を明らかにすることができたと考えている。その中で派生して明らかになってきた事柄も多く、為長の事績と作品を考察しつつ、その周辺についても今後取り組んでいきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年の調査は、主に京都・奈良の寺院や関係機関でおこなうことが多く、旅費を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、山形市内での調査を多数行うことが予想される。また、台湾の李育娟氏との研究会も予定されている。このことから、旅費に関しては、本年度使用しなかった分も含め使用する予定である。
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