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2014 Fiscal Year Research-status Report

ヴィクトリア時代後期の英文学における中世主義の研究――ウィリアム・モリスを中心に

Research Project

Project/Area Number 26770100
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

清川 祥恵  神戸大学, 国際文化学研究科, 研究員 (50709871)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2018-03-31
Keywords英文学 / 北方神話学 / 中世主義 / ウィリアム・モリス / チャールズ・キングズリー
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、ウィリアム・モリスにチャールズ・キングズリーが与えた社会・政治的影響について中心的に研究を進めた。両者の関係について本格的に論じようとする研究は現時点ではほとんど見当たらず、またとくに我が国においてはキングズリーについての研究は児童文学論やキリスト教社会主義の概説を除いてはほぼ行なわれていないといってよい。また英国においても、キングズリーの文学について論じた研究は1970年代に集中しており、以来文学分析からの研究が飛躍的に発展したとは考えにくい。そこで、モリスに及ぼされた影響をより精確に把握するために、2014年9月より英国に1ヶ月程度渡航し、大英図書館ほかで資料収集を行なった。とりわけモリスとキングズリーの両者に共通して見られる北欧神話受容の影響を通して、18世紀以降高まる好古趣味の動きとドイツ語圏から輸入された北欧神話研究が「イングランド人」のルーツ探求に果たした役割について考察をすすめた。これにより、当時「神話」(myth)という語が、それまで伝統的に意味してきた「ギリシャ・ローマ神話」のみを指すものでは最早なくなり、理論的にもまったく矛盾することなく、多様な「神話」体系を包含していった過程を明らかにし、さらにキングズリーの理想とする社会像についても一定の手がかりを得た。ここまでの成果は2015年3月15日の「神話研究史における近代『神話学』の特性の解明」プロジェクト第3回研究会において報告したほか、現在、論文投稿の準備を進めている。なおこれに関連して社会思想史分野での意見交換を行なうため、2014年6月7日(土)・8日(日)に沖縄県宜野湾市において開催されたアメリカ学会第48回年次大会に参加した。また並行して、モリス自身の中世主義の実態解明のため、フランス北部でも調査を行ない、主に初期作品中に見られるゴシック建築の影響についても論文化を進めている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

研究計画では2014年度内にチャールズ・キングズリーの社会批評の思想的位置づけにかんして少なくとも一本は論文として発表する予定であったが、非常勤講師としての出講等の、申請時からの状況の変化により、エフォート率の低下が避けられなかったため、やや遅れている。構想そのものおよび調査の進捗については概ね順調である。

Strategy for Future Research Activity

今後は、2014年度の成果をふまえ、多元的な「神話」の受容によって導かれた理想の社会像が、実際にキングズリーおよびモリスの文学作品にいかなる影響を与えたのかということをより精緻に分析する必要がある。キングズリーとモリスの両者に共有される理想化された北方神話世界と、キングズリーとモリスの間にみられるキリスト教にたいする態度の相違について考察を進めることで、オックスフォード運動以降のイングランドにおける信仰復興の諸相がモリスに及ぼした影響を明らかにすることをめざす。これにより、中世主義という思想そのものの多様性を把握すると同時に、モリスの思想のみならず、キングズリーのキリスト教社会主義思想の特徴についても一定程度解明できると考える。これにさいしては、2014年度に予定しつつ訪問を見送ったノース・デヴォンのCharles Kingsley Museumでの調査を行ない、文献資料を補完しつつ進めたい。
また、現在2014年度の研究成果についての論文投稿も2015年度中に行なうこととし、15年度に新たに得られた成果については、日本英文学会・日本ヴィクトリア朝文化研究学会および所属研究プロジェクトの成果報告会での口頭発表と学会誌投稿を中心としつつ、社会思想史学会での報告も検討中である。

Causes of Carryover

申請時の計画としてはCharles Kingsleyの全集を購入予定であったが、申請後に決まった非常勤出講先の図書館に所蔵があったため、この費用うち一部を調査旅費に充てることとし、残額114,000円余を次年度使用額とした。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度分と併せて、円安によって実質高騰している洋書の購入費用およびパソコン購入費用に充てる。

  • Research Products

    (2 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 銀河鉄道は『無可有郷』に到るのか――ユートピア思想の伝統とその今日的意義2015

    • Author(s)
      清川祥恵
    • Journal Title

      国際シンポジウム「コミュニティの『変容』と『共創』――グローカルな視点から生み出す市民的公共性」報告書

      Volume: 1 Pages: 未定

  • [Presentation] 近代神話学の展開とヴィクトリア時代後期の英文学における『神話』受容2015

    • Author(s)
      清川祥恵
    • Organizer
      「神話研究史における近代『神話学』の特性の解明」プロジェクト第3回研究会
    • Place of Presentation
      神戸大学国際文化学研究科(神戸市)
    • Year and Date
      2015-03-15

URL: 

Published: 2016-06-01  

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