2016 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア時代後期の英文学における中世主義の研究――ウィリアム・モリスを中心に
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26770100
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清川 祥恵 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (50709871)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウィリアム・モリス / 北方趣味 / アイスランド / アーサー王伝説 / デモクラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ウィリアム・モリスのアイスランド体験が彼のデモクラシーへ及ぼした影響についての調査を中心的におこなった。かねてからの計画通り、夏期にアイスランドへ渡航し、アイスランド文学ひいては「北方」の文学の端を開いたものとされる『エッダ』ほかの伝承文学にかんし、アイスランド国立博物館、レイキャヴィクの市立博物館で調査を実施した。またモリスの二度にわたるアイスランド訪問の回想は、各地に点在する、北欧神話とゆかりの深い景勝地と同様に、当地の民衆の生活の慎ましさ・力強さによっても印象づけられており、アイスランド南部の民族博物館で19世紀当時の生活にかんする資料にあたることができたことが、モリスの芸術観を確認する上で有用となった。 こうした民衆生活と伝承文学が、同時に、ありのままに自然の姿の中に溶け込んでいることそのものが、モリスが晩年にかけて著わした理想社会の姿と重なるという点は、昨年度検討したキングズリーにも見られるアングロサクソニズムと民主主義とは、また異なった民主主義観を形成している。この点を中心として、アイスランド調査で得た成果を11月に日本ヴィクトリア朝文化研究学会第16回全国大会において、「ウィリアム・モリスの北方趣味とデモクラシー」として研究発表した。なおこの内容は、年度をまたぐが論文として投稿予定である。 また、モリスの中世主義思想にかんし、中世文学、とりわけアーサー王伝説の影響も顕著に見られるため、前述のテーマ(北欧神話にかかる思想的影響)と並行し、神話・伝承文学の復興の意義についても考察をすすめた。やや付随的な成果と言えるが、佛教大学四条センターより市民講演会に招聘頂いたため、本課題にも関わる内容を一部社会に直接還元することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度の主要なテーマであったモリスのアイスランド体験の検証について、一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は最終年度となるため、これまで得た知見の成果発表に尽力するとともに、モリスの中世主義思想が、通念的な「中世主義」とどの程度一致し、また異なるのかについて、より精緻に検討していく予定である。欧州の情勢について、不安定な状況が続いているが、夏期はロンドンおよび西イングランドでの資料調査を行なう予定である。また本年度も所属学会への論文投稿、William Morris Societyへの論文投稿、秋期から冬期にかけての日本英文学会関西支部、日本ヴィクトリア朝文化研究学会での発表を調整中である。
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Causes of Carryover |
欧州情勢の不安定化によって、渡航調査の予定に順延が発生しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の渡航調査費用として使用する。
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Research Products
(2 results)