2014 Fiscal Year Research-status Report
現代日本社会におけるリスナーシップの役割:世代・ジェンダー・異文化との交差
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26770142
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
難波 彩子 岡山大学, その他部局等, 准教授 (00638760)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リスナーシップ / 家族会話 / 世代 / 社会言語学 / 談話分析 / 大学生の会話 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は(1)新たな会話データの収集、(2)既存の家族会話データの分析、(3)国内外の学会への参加、の3つの研究活動を中心に行った。 (1)3つの社会的要素(世代・ジェンダー・異文化)とリスナーシップの関係を探るため、本研究のキーワードの「世代」を手がかりに、新たに10代後半から20代前半の世代に焦点をあて、日本人同士の会話収集を行った。具体的には、大学生同士の自然会話を3つのグループ(女性同士・男性同士・男女混合)に分けて各グループ1時間ほどビデオ収録を行った。合計12組(女性同士4組・男性同士4組・男女混合4組)、720分のデータを収集し、当初のデータ収集計画(合計6組)を上回ることができた。 (2)(3)既存の「家族会話データ」の分析では、相互行為社会言語学の枠組み「会話スタイル」(Tannen,1984/2005))を用いながら、家族会話における家族メンバーのリスナーシップの示し方を、会話上の役割と各家族メンバーの社会的な役割の両面から考察した。この分析結果の成果として、日本認知言語学会のワークショップで研究発表を行った。また、参与枠組み(Goffman, 1981)を用いながら、既存の「聞き手」の在り方では外れてしまうような「聞き手行動」にも着目し、聞き手の振舞の多様性についても分析を深めた。その研究成果として、ラウンドテーブル『参与(関与)枠組みの不均衡を考える』(主催者 片岡邦好)にて、研究発表を行った。さらに、リスナーシップの多様性について、多角的に考察していく必要があるため、聞き手行動に関連付けながら研究を行っている国内研究者7名を招聘し、ワークショップを主催した。リスナーシップの柔軟性や特質について活発な議論を行うことができた。最後に、イギリスで国外の連携研究者と会議を開き、当該研究の枠組みや分析について有益な助言が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の主な研究実施計画であった新たなデータ収集について年度内に完了することができた。データ収集当初は、6組ほどのデータ収集を行う計画であったが、最終的には12組のデータ収集を行うことができた。 また、既存の家族会話データについても、「社会的な役割」を分析の要素に含めながら分析を深める事が出来た。研究成果としては、国内の学会(日本認知言語学会)のワークショップで研究を発表を行った。また、参与者の枠組みに関連づけながら、従来の研究では見逃されてきた聞き手の振舞や、新たな聞き手についての捉え方について焦点を置いた研究発表も行った(招聘あり、ラウンドテーブル 主催者 片岡邦好)。 さらに、当初研究計画には含められていなかったが、国内で聞き手行動に関連付けながら研究を行っている研究者7名を招聘し、ワークショップを主催した(共催者 植野貴志子)。様々な分野におけるリスナーシップの多様性や柔軟性について積極的な議論を行うことができた。 最終的には、国外の連携研究者と研究会合を開き、リスナーシップの研究の進行状況や分析の進め方について新たな知見やアドバイスを得る事ができ、今後の分析に反映していく予定である。 これらの状況から、平成26年度の研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に行った会話データ収集が完了したことを受けて、今後はデータの整理と「世代」「ジェンダー」をキーワードにおいた分析を行う予定である。その際必要であれば、データ収集を追加することも考慮する。これらの活動に加え、国内外の研究会・学会などの参加を通じて、関連研究者らから分析や考察についての助言を得ながら研究成果の発信を目指したい。
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Causes of Carryover |
平成26年3月20日~21日に開催したワークショッの準備代について、当初計画していた予算よりも最終的に低額で実施することが可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度分として請求した助成金と会わせた使用計画としては、研究に必要とされる消耗品または国内の出張費として使用することを考えている。
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