2015 Fiscal Year Research-status Report
現代日本社会におけるリスナーシップの役割:世代・ジェンダー・異文化との交差
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26770142
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
難波 彩子 岡山大学, その他部局等, 准教授 (00638760)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リスナーシップ / ジェンダー / 異文化 / 世代 / 社会言語学 / 談話分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は(1)新たなデータの収集、(2)既存の若い世代の会話データの分析、(3)国内の学会への参加及びラウンドテーブルの共催、そして論文執筆の3つの研究活動中心に行った。(1)3つの社会的要素(世代・ジェンダー・異文化)とリスナーシップの関係を探るために、本研究のキーワードの「異文化」を手がかりに、本学の日本人学生で海外の大学に長期留学する予定の学生に向けて、異文化に対する意識や態度の変化についてインタビューとフォローアップアンケートを行った。インタビューは留学前後の両方で行う予定で、まずは留学予定者4名に調査を行った。また、平成26年度から長期留学に出で帰国した学生5名についても帰国後の調査を行った。当初は、日本での暮らしが長い外国人同士の会話収集を予定していたが、会話参加者の収集が難しい状況にあり、上記のような学生の異文化意識の調査に変更し、データを収集した経緯がある。(2)平成26年度に収集した若い世代の会話データの分析を中心に行った。本データは男女間の会話が含まれていることから、若い世代(10代後半から20代前半)におけるジェンダーと聞き手行動の役割を探る分析を中心に行った。(3)当初2016年7月に開催された第14回国際語用論学会(ベルギー)にて口頭発表を予定していたが、本務校の授業スケジュールにより急遽出席をキャンセルすることとなり、国内での活動に焦点をあてて、学会でのワークショップを主催した(ワークショップ「リスナーシップとアイデンティティ―ジェンダーと異文化の視点」)。また、リスナーシップに関連した研究を行っている国内の研究者12名を招集し、昨年度に続いて第2回目のラウンドテーブルも共催した。さらに、若い世代やジェンダーに関連した日本語用論学会論文集と本の1章(くろしお出版)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の主な研究実施計画であった「異文化」に関する新たなデータ収集について順調に進めている。データ収集の予定に変更が生じたが、10名ほどのデータ収集を行うことができ、継続的に収集を行っていきたい。また、既存の若い世代の会話データについても、若い世代全体の聞き手行動の役割に関する調査を進めると共に、ジェンダーと聞き手の役割についても考察を深めることができた。その研究成果として、第一に、学会でワークショップを主催し、リスナーシップと、ジェンダーと異文化といった社会的要素との接点を見出し、会話参与者のアイデンティティについて、共同発表者と考察を深める事が出来た(ワークショップ:「リスナーシップとアイデンティティ―ジェンダーと異文化の視点」(発表者:難波彩子、植野貴志子、山口征孝、司会者:村田和代)。第二に、12名の国内の研究者を招集し、聞き手行動の再考を行う第2回のラウンドテーブルを共催し(共催者:村田和代、植野貴志子、難波彩子)、聞き手の役割の多様性について議論を深めることができたこともプロジェクト全体の大きな躍進となった。論文では、上記の日本語用論学会論文集の執筆と「若い世代」に関わるデータを用いて聞き手行動を「フッティング」(Goffman, 1981)や「関与」(Tannen, 1987)と関連づけた本の執筆を行った(『コミュニケーションを枠づける―参与・関与の不均衡と多様性』(仮)(編者:片岡邦好,池田佳子,秦かおり、難波彩子担当:「日本語会話における聞き手のフッティングと積極的な関与」)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に行った会話データ収集をさらに継続して行う予定である。さらに、「世代」「ジェンダー」「異文化」をキーワードにおいた分析を深め、国内外の研究会・学会などの参加を通じて、関連研究者らと分析や考察についての助言を得ながら研究成果の発信を目指したい。特に、過去2回のラウンドテーブルに招集した国内の研究者約12名を共同執筆者に含め、リスナーシップをテーマにした本の執筆をラウンドテーブルの共催者(村田和代、植野貴志子)と現在進め始めており、本の出版が完了するよう尽力したい。
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Causes of Carryover |
本を購入予定だったが、図書館納入期限に間に合わず、購入できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入できかなかった本を購入する予定である。
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