2015 Fiscal Year Research-status Report
新出簡牘資料を用いた戦国秦から統一秦にかけての国制変革に関する研究
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26770240
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
渡邉 英幸 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (00615502)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国古代史 / 里耶秦簡 / 戦国秦 / 統一秦 / 国制 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究成果として、まず本年度の課題であった岳麓秦簡の「邦亡」および秦代史料の「邦」については、読解・検討をほぼ完了した。秦代の「邦亡」や「邦」について、近年一部の研究者が「邦」を秦の畿内領域とする説を提示したが、本研究により「邦」はやはり秦国を指すことを確定できた。その一部は東北大学で開催された東北中国学会(2015年5月)で口頭発表した。その後、西周時代以降の「邦」および関連文字資料の検討も進めつつ、岳麓秦漢の「邦亡」に関する完成稿の執筆を進めており、2016年度前半には脱稿する予定である。あわせて秦代の畿内領域に関わる諸概念「故秦」や「中」についても再検討を進めている。 また8月に実施した中国湖南省長沙市から龍山県里耶鎮での現地調査が挙げられる。長沙市では湖南省文物考古研究所を訪問し、里耶秦簡や五一広場木簡などを実見することができた。先に論文として公表したJ1-8ー461簡をはじめ、写真版では鮮明に見えなかった文字をつぶさに確認し、先行研究の諸説を検証することができた。また里耶故城遺跡や黔中郡遺跡、出土品を展示した博物館を参観し、発掘調査報告書の知見と合わせることで、里耶をはじめとする西南地帯にはかなり多様な文化をもった集団が居住していたこと、そこに秦の統治が先行する楚の拠点を利用する形で入り、画一的な行政を実施する一方で、その下には多様な文化の雑居状態が残っていたこと、原住文化―楚―秦という形で積み重なる文化・社会の重層的構造が他地域でも確認できる可能性があること、などの諸点を確認した。これらは秦・漢時代の辺境統治の実態を考察する上できわめて重要な視座であり、今後の研究の基盤を固めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、岳麓秦簡の「邦亡」関係事例や、先秦時代の「邦」概念の検討を進めることができ、「邦亡」について確定的な知見を得られた。さらに「故秦」や「中」など関連する諸問題についても考察の必要性が明らかになった。また里耶遺跡の実地調査を行い、事前調査で関連遺跡の発掘報告書の知見を参照した上で、現地の周辺地形や出土状況を確認し、今後の検討の基礎となる知見を獲得できた。以上の諸点に鑑み、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、まず岳麓秦簡の「邦亡」に関する研究成果をすみやかに公表すること、あわせて関連して検討を進めている「故秦」「邦」「中」といった重要概念に関する検討結果をとりまとめ、個別に公表することである。その上で「皇帝」に関する従来の研究史上の対立点を検証し、現時点で新出文字資料から得られた知見と照らし合わせることで、当該課題に関する研究の基盤を構築することを目指す。
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Research Products
(1 results)